工事請負契約の締結の業務手順書テンプレート(建設業)
見積が通ったあと、契約条件を詰め、建設業法19条の記載事項を満たす契約書を作り、署名・交付して台帳に登録するまでの流れです。手順書にしておくと、記載事項の漏れや、契約前着工、注文書だけで済ませる不備を防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 法定の記載事項を満たした契約書を、着工前に必ず取り交わすための手順です。
- 範囲
- 受注の内示から、契約書の締結・保管・関係部署への共有まで。
- 始まるきっかけ
- 発注者から受注の内示(口頭・メール・落札通知)を受けたとき
- 頻度・量の目安
- 随時・月5〜20件
- 使う書類・システム
- 見積書・見積条件、民間(七会)連合協定 工事請負契約約款、または公共工事標準請負契約約款、発注者の注文書・請書、工程表(契約工期の根拠)、契約台帳
担当と役割
営業担当
契約条件の調整、契約書の作成依頼、発注者との取り交わし
工務・契約担当
契約書と約款の作成、記載事項と印紙の確認、保管
工事部長
契約条件・工期・支払条件の承認
経理担当
前払金・支払条件の登録、印紙税の処理
手順(11ステップ)
- 条件確認営業担当・目安 30分
1. 内示内容と最終見積を照合し、契約条件を書き出す
請負代金、工期、支払条件(前払・出来高・竣工払)、別途工事、契約不適合の扱いを1枚にまとめます。
- 確かめること
- 見積条件と内示内容が食い違っていないか
- できあがるもの
- 契約条件シート
2. 工期と支払条件を承認する
工程表から無理のない工期かを確かめます。支払条件は資金繰り(協力会社への支払)と合うかを見ます。
- 確かめること
- 著しく短い工期になっていないか
- できあがるもの
- 承認済み契約条件
- 作成工務・契約担当・目安 1時間
3. 契約書と約款を準備する
民間工事は民間(七会)連合協定約款など標準約款をもとにし、特約がある場合は特約条項に書きます。
- 確かめること
- 約款の版が最新か、特約が約款と矛盾しないか
- できあがるもの
- 契約書案
- 作成工務・契約担当・目安 30分
4. 建設業法19条の記載事項を1項目ずつ確かめる
工事内容、請負代金、着工・完成の時期、前払・出来形払の時期と方法、設計変更・工期変更時の扱い、価格変動時の代金変更、天災時の負担、検査と引渡しの時期、遅延時の違約金、紛争解決の方法などを照合します。
- 確かめること
- チェック表の全項目に該当箇所の条番号が書けたか
- できあがるもの
- 記載事項チェック表
- 作成工務・契約担当・目安 20分
5. 価格が変わるおそれのある資材の情報を契約前に伝える
鋼材・生コンなど価格変動のおそれがある資材について、その旨と根拠を発注者に書面で通知します。
- 確かめること
- 通知した記録が残っているか
- できあがるもの
- おそれ情報の通知書
- 交付営業担当・目安 1〜5日
6. 発注者に契約書案を送り、修正を反映する
修正があれば版番号を上げて差分を記録します。
- 確かめること
- 最終版の金額と工期が承認済み条件と一致するか
- できあがるもの
- 最終契約書
- 交付工務・契約担当・目安 30分
7. 署名・押印、または電子契約で締結する
紙なら2通作成して双方保管し、印紙を貼って消印します。電子契約なら発注者の承諾を得て、改ざん防止と本人確認ができる方法で締結します。
- 確かめること
- 印紙額が契約金額に合っているか(電子契約は印紙不要)
- できあがるもの
- 締結済み契約書
8. 着工日より前に締結済みかを確かめる
着工予定日と締結日を契約台帳で照合します。
- 確かめること
- 契約前着工になっていないか
- できあがるもの
- 契約台帳の確認欄
9. 契約台帳に登録し、原本を保管する
工事番号を採番し、金額・工期・支払条件・保証・担当者を登録します。
- 確かめること
- 工事番号が重複していないか
- できあがるもの
- 契約台帳の1行
10. 支払条件と前払金を経理システムに登録する
前払金保証(公共工事)や出来高請求の締め日を登録します。
- 確かめること
- 請求予定と入金予定が登録されたか
- できあがるもの
- 入金予定の登録
- 共有営業担当・目安 30分
11. 工事部へ引き継ぎ、施工計画の担当を決める
契約書・見積内訳・質疑回答・現地調査記録を工事担当に渡します。
- 確かめること
- 引継ぎ資料の欠けがないか
- できあがるもの
- 引継ぎ記録
締めのチェックリスト
- 承認済みの契約条件と契約書が一致しているか
- 19条の記載事項がすべて入っているか
- 特約と約款が矛盾していないか
- 価格変動のおそれ情報を通知したか
- 工期が無理のない日数か
- 印紙税の額が正しいか
- 着工前に締結したか
- 契約台帳に登録したか
- 工事担当へ引き継いだか
よくあるミスと防ぎ方
注文書だけで着工する
注文書・請書だけでも19条の記載事項を満たせば契約書面になりますが、項目が足りないことが多いです。基本契約約款を添付するか、契約書を交わします。
契約前着工
工期に追われて口約束で着工すると、変更や支払でもめます。台帳で締結日と着工日を照合します。
追加工事を書面にしない
追加・変更も着工前に書面(変更契約)で取り交わします。口頭指示は記録だけでも残します。
測っておきたい指標
- 契約前着工の件数
- 内示から締結までの日数
- 変更契約の書面化率
関係する法令・規格
建設業法19条(契約の内容)
工事内容・請負代金・工期など法定の事項を書面に記載し、署名・記名押印して相互に交付します。相手方の承諾があれば電子でも可能です。
建設業法19条の3・19条の5
注文者が取引上の地位を利用して原価に満たない金額で契約させること、著しく短い工期で契約することは禁止されています。
建設業法40条の3(帳簿の備付け)
営業所ごとに帳簿と契約書の写しなどを保存します(原則5年、発注者と結んだ住宅の新築工事は10年)。
印紙税法
紙の請負契約書は第2号文書として契約金額に応じた印紙が必要です。電子契約は課税文書の作成に当たらないとされています。
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業務手順書テンプレート集(建設・14業務)
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- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
11手順のうち4つは、自動化の候補です
よくある質問
- 注文書と請書だけでも契約になりますか
- 19条の記載事項がすべて書かれていれば書面として認められます。足りない事項は基本約款を添付して補うのが一般的です。
- 電子契約にできますか
- 相手方の承諾を得たうえで、改ざんが分かる方法・本人性を確かめる方法などの要件を満たせば電子で締結できます。印紙も不要です。
- 契約書はいつまで保存しますか
- 建設業法では営業所ごとに帳簿とともに5年(発注者と直接結んだ住宅の新築工事は10年)の保存が必要です。税法上の保存期間も確認します。