工事見積の作成の業務手順書テンプレート(建設業)
現地調査と図面から数量を拾い、協力会社の見積を集めて比較し、材料費・労務費・経費の内訳を分けた見積書を出すまでの流れです。手順書にしておくと、拾い漏れや見積条件の書き忘れ、労務費を削りすぎた見積を防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 見積の担当者が変わっても、同じ精度と同じ書式で見積書を出せるようにします。
- 範囲
- 見積依頼の受付から、見積書の提出と提出後の記録まで。契約交渉は「工事請負契約の締結」の手順書で扱います。
- 始まるきっかけ
- 発注者から図面・仕様書つきの見積依頼(メール・入札公告・営業経由)が届いたとき
- 頻度・量の目安
- 随時・月10〜30件(規模により1件あたり半日〜2週間)
- 使う書類・システム
- 見積依頼書・図面・仕様書・現場説明書、質疑回答書、数量拾い表、協力会社の見積書、社内の単価表・過去の実行予算
担当と役割
営業担当
依頼の受付、発注者との条件確認、見積書の提出
積算担当
現地調査、数量拾い、単価入れ、内訳書の作成
工事部長
見積金額と見積条件の承認
協力会社
専門工事分の見積の提出
手順(11ステップ)
1. 見積依頼を受け、見積台帳に1行登録する
工事名・発注者・提出期限・提出方法・見積範囲(本体のみか、外構・設備を含むか)を台帳に書きます。
- 確かめること
- 提出期限と、建設業法施行令の見積期間(予定価格500万円以上5,000万円未満なら10日以上など)が確保されているか
- できあがるもの
- 見積台帳の1行
- 受付積算担当・目安 1〜2時間
2. 図面・仕様書の欠落と不明点を洗い出す
図面リストと実際の図面枚数を突き合わせ、仕様書の特記事項(指定メーカー・工法・養生条件)に印をつけます。
- 確かめること
- 図面番号の抜け、図面と仕様書の食い違いがないか
- できあがるもの
- 質疑事項のメモ
- 調査積算担当・目安 半日
3. 現地調査を行い、写真と条件を記録する
搬入経路、前面道路の幅、電線、隣地との距離、既存の埋設物、近隣の状況を確認し、写真を撮ります。
- 確かめること
- 重機・車両が入れるか、道路使用許可や夜間作業が要るか
- できあがるもの
- 現地調査シート・写真
- 調査営業担当・目安 30分
4. 質疑書を発注者に出し、回答を見積条件に反映する
質疑の期限内に、番号をつけた質疑書を送ります。回答は質疑回答書として保管します。
- 確かめること
- 回答が出ていない項目は「見積条件」に前提を書くこと
- できあがるもの
- 質疑回答書
5. 図面から数量を拾い、数量拾い表にまとめる
工種ごと(土工・躯体・仕上・設備)に、図面番号と通り芯を書いて拾います。後で見直せるよう計算式を残します。
- 確かめること
- 延床面積あたりの数量が過去の類似工事と大きくずれていないか
- できあがるもの
- 数量拾い表
- 積算積算担当・目安 3〜7日
6. 協力会社に見積を依頼し、相見積で比べる
同じ数量・同じ条件書で2〜3社に依頼します。見積期間は協力会社にも十分に取ります。
- 確かめること
- 各社の見積範囲(材料支給か、運搬費・諸経費込みか)がそろっているか
- できあがるもの
- 見積比較表
- 積算積算担当・目安 1〜3日
7. 単価を入れ、材料費・労務費・経費を分けた内訳書を作る
社内単価表と協力会社見積から単価を入れます。内訳は材料費・労務費・その他経費が分かる形にします。
- 確かめること
- 労務費が国の「労務費の基準」に照らして著しく低くなっていないか
- できあがるもの
- 見積内訳書
- 積算積算担当・目安 2時間
8. 共通仮設費・現場管理費・一般管理費を計上する
工期・現場条件から仮設(足場・仮囲い・仮設電気)と現場管理費を積み上げます。
- 確かめること
- 工期が短すぎないか(著しく短い工期での契約は禁止)
- できあがるもの
- 見積内訳書(諸経費)
9. 見積金額と原価率を確認し、承認する
過去の実行予算・竣工原価と比べ、粗利率と値引きの上限を決めます。
- 確かめること
- 原価割れになっていないか、見積条件の書き漏れがないか
- できあがるもの
- 承認済みの見積書(稟議)
- 提出営業担当・目安 30分
10. 見積書に見積条件・有効期限を書いて提出する
見積範囲、別途工事、工期の前提、資材価格が上がったときの扱い、有効期限(例: 提出から3か月)を明記します。
- 確かめること
- 価格が変わるおそれがある資材の情報を伝えたか
- できあがるもの
- 提出済み見積書
11. 提出結果を見積台帳に記録し、失注理由も残す
受注・失注・保留を記録し、失注なら他社金額や理由を聞ける範囲で残します。
- 確かめること
- 台帳の状況欄が空のまま放置されていないか
- できあがるもの
- 見積台帳の更新
締めのチェックリスト
- 見積期間が施行令の日数を満たしているか
- 図面リストと図面の枚数が合っているか
- 質疑回答をすべて反映したか
- 数量拾い表に図面番号と計算式が残っているか
- 協力会社見積の範囲がそろっているか
- 材料費・労務費・経費を分けて書いたか
- 工期の前提を見積条件に書いたか
- 別途工事・除外項目を書いたか
- 価格変動時の扱いを書いたか
- 有効期限を書いたか
- 承認者の承認を得たか
よくあるミスと防ぎ方
一式見積で内訳が分からない
内訳がないと価格交渉や変更契約のときに根拠を示せません。工種別・材料費と労務費を分けて書きます。
見積範囲の食い違い
外構や電気引込の扱いがあいまいだと、契約後に追加費用でもめます。別途工事を見積条件に列挙します。
協力会社見積の条件違い
運搬費や諸経費の有無がそろわないまま安い方を選ぶと、後で増額されます。条件書を1枚にして全社に配ります。
過去単価の使い回し
資材高騰期に古い単価を使うと原価割れします。単価表に更新日を入れ、3か月を過ぎたら確認します。
測っておきたい指標
- 見積1件あたりの作成時間
- 受注率(件数・金額)
- 見積原価と竣工原価の差
この業務で残す書類の保存期間
関係する法令・規格
建設業法(見積・見積期間)
建設業者は材料費・労務費その他経費の内訳を明らかにした見積に努めます。注文者は工事の予定価格に応じた見積期間(施行令で1日以上・10日以上・15日以上)を設けます。
改正建設業法(2025年12月12日全面施行)
労務費の基準に照らして著しく低い労務費等による見積や、受注者による著しく短い工期・原価割れの契約が禁止されました。
インボイス制度
見積書自体は適格請求書ではありませんが、税抜・税込と消費税額の書き方を請求書とそろえておくと後の照合が楽になります。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(建設・14業務)
- 「工事見積の作成」を含む14業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
11手順のうち4つは、自動化の候補です
ジンベイ GenApp
台帳・申請・承認の仕組み化
- 手順1:見積依頼を受け、見積台帳に1行登録する
- 手順9:見積金額と原価率を確認し、承認する
- 手順11:提出結果を見積台帳に記録し、失注理由も残す
よくある質問
- 見積期間は何日取ればよいですか
- 建設業法施行令で、予定価格が500万円未満なら1日以上、500万円以上5,000万円未満なら10日以上、5,000万円以上なら15日以上とされています(やむを得ない場合は後の2つを5日以内で短縮可)。協力会社に頼むときも同じ考え方で期間を取ります。
- 材料費・労務費を分けて書く必要はありますか
- 建設業法で内訳を明らかにした見積に努めることとされ、2025年12月からは著しく低い労務費等での見積が禁止されています。分けて書くと交渉や変更契約の根拠にもなります。
- 協力会社の見積書を手早く比べるには
- 届いた見積書(PDF・紙)をジンベイ GenOCRで読み取り、工種・数量・単価を比較表に並べると、転記の手間と写し間違いを減らせます。