棚卸の業務手順書テンプレート(製造業)
製造業の棚卸は、決算や月末に、原材料・仕掛品・製品・貯蔵品の数量を実際に数え、帳簿と比べて差を正し、在庫の金額を確定する業務です。手順書にしておくと、仕掛品の数え漏れや二重カウント、預かり品を自社在庫に数える誤りを防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 在庫の数量と金額を正しく確定し、決算と原価計算の基礎を整えます。
- 範囲
- 棚卸の計画から、カウント・集計・帳簿との差異調査・評価額の計算・帳簿の修正まで。
- 始まるきっかけ
- 期末・半期末・月末の棚卸日(一斉棚卸)。循環棚卸を行う場合は計画した日。
- 頻度・量の目安
- 年1〜2回の一斉棚卸(半日〜1日)と、月次の循環棚卸
- 使う書類・システム
- 棚卸表(品目・ロケーション・数量欄)、棚卸札(現品票)、帳簿在庫一覧、ロケーション表(棚番)、工程別の仕掛品一覧、預かり品・支給品の一覧
担当と役割
棚卸責任者(経理・生産管理)
棚卸計画、集計、差異の調査、評価額の確定
カウント担当(現場)
担当エリアの実数の計数と記入
確認担当
ダブルチェック、記入漏れの確認
経理
評価額の計算、帳簿の修正、監査対応
手順(14ステップ)
- 計画棚卸責任者・目安 60分
1. 棚卸日・範囲・担当エリアを決める
工場・倉庫をエリアに分け、エリアごとにカウント担当と確認担当を割り当てます。
- 確かめること
- 全てのエリア(外部倉庫・外注先の在庫を含む)に担当がいるか
- できあがるもの
- 棚卸計画表
2. 棚卸表と棚卸札を準備する
帳簿の品目とロケーションを印刷し、通し番号の棚卸札を用意します。帳簿数量は表に出しません。
- 確かめること
- 棚卸札の通し番号を記録したか
- できあがるもの
- 棚卸表・棚卸札
- 準備棚卸責任者・目安 15分
3. 入出庫を止める時刻(カットオフ)を決めて知らせる
棚卸開始時刻以降の入庫・出荷・払出しを止めるか、別に記録します。
- 確かめること
- カットオフ前後の伝票が区別できるか
- できあがるもの
- カットオフの通知
- 準備カウント担当・目安 1〜2時間
4. 前日までに整理整頓し、区分を表示する
自社在庫・預かり品(顧客の支給材)・不良品・廃棄予定品を分けて表示します。
- 確かめること
- 預かり品に「預かり」の表示があるか
- できあがるもの
- 区分表示
- 計数カウント担当・目安 エリアにより
5. 原材料・製品を数え、棚卸札に記入する
箱単位の入数×箱数+端数で数え、品番・数量・単位を棚卸札に書いて現品に付けます。
- 確かめること
- 単位(個・kg・m)が帳簿と同じか
- できあがるもの
- 記入済みの棚卸札
- 計数カウント担当・目安 エリアにより
6. 仕掛品を工程ごとに数える
工程の途中にある品物を、どの工程まで終わったかとともに記録します。重量で数える場合は単重で換算します。
- 確かめること
- 工程の区分(どこまで加工済みか)を書いたか
- できあがるもの
- 仕掛品の棚卸札
- 確認確認担当・目安 エリアにより
7. 別の人が抜き取りで数え直す
棚卸札の2〜3割を抜き取って数え、違いがあれば全数を数え直します。
- 確かめること
- 数え直しの結果が一致したか
- できあがるもの
- 確認印
- 回収棚卸責任者・目安 30分
8. 棚卸札を通し番号で回収する
使った札・未使用の札・書き損じの札を番号で全て回収します。
- 確かめること
- 札の番号に抜けがないか
- できあがるもの
- 回収済みの棚卸札
9. 棚卸札の数量を集計する
品番ごとに数量を合計し、棚卸表にまとめます。
- 確かめること
- 転記漏れ・二重計上がないか
- できあがるもの
- 集計表
10. 帳簿数量と比べて差異を出す
品番ごとに実数−帳簿数を出し、金額の大きい順に並べます。
- 確かめること
- 差異が基準(金額・率)を超える品目を抽出したか
- できあがるもの
- 差異一覧
- 調査棚卸責任者・目安 2〜4時間
11. 大きな差異の原因を調べる
カットオフ前後の伝票、払出しの記録漏れ、単位の誤り、不良品の処理漏れを確かめ、必要なら再カウントします。
- 確かめること
- 原因が分かった差異と分からない差異を分けたか
- できあがるもの
- 差異の原因一覧
- 評価経理・目安 2〜4時間
12. 在庫の評価額を計算する
数量に単価(原材料は購入単価、仕掛品・製品は原価)を掛けます。長期滞留品・不良品は評価減を検討します。
- 確かめること
- 採用している評価方法(総平均法・移動平均法など)どおりか
- できあがるもの
- 在庫評価額
- 修正経理・目安 1時間
13. 帳簿在庫を実数に合わせて修正する
差異の理由とともに棚卸差異として計上し、承認を受けます。
- 確かめること
- 修正の承認記録があるか
- できあがるもの
- 修正済みの帳簿
- 振り返り棚卸責任者・目安 30分
14. 差異の原因の再発防止策を決める
記録漏れが多い工程や品目に、払出しの記録方法の見直しなどを決めます。
- 確かめること
- 対策の担当と期限が決まっているか
- できあがるもの
- 振り返りメモ
締めのチェックリスト
- 外部倉庫・外注先の在庫も範囲に入っている
- 棚卸札に通し番号を振った
- カットオフの時刻を周知した
- 預かり品・不良品を区分して表示した
- 単位が帳簿と同じである
- 仕掛品に工程の区分を書いた
- 抜き取りの数え直しをした
- 棚卸札を番号の抜けなく回収した
- 基準を超える差異の原因を調べた
- 評価方法どおりに評価額を計算した
よくあるミスと防ぎ方
顧客の支給材を自社在庫に数える
預かり品と自社品が同じ棚にあると起きます。前日までに「預かり」の表示をして分けます。
外注先にある在庫を数え忘れる
加工中で外に出ている材料・仕掛品が漏れます。外注先に在庫の証明を依頼して加えます。
カットオフ前後の出荷を二重に数える
棚卸中に出荷すると帳簿と実物がずれます。カットオフ後の伝票は別にまとめます。
測っておきたい指標
- 棚卸差異の金額と率
- 棚卸にかかった延べ時間
- 長期滞留在庫の金額
この業務で残す書類の保存期間
関係する法令・規格
法人税法(棚卸資産の評価)
期末の棚卸資産は届け出た評価方法(届出がなければ最終仕入原価法)で評価します。棚卸表は帳簿書類として保存します。
会社計算規則・棚卸資産の評価に関する会計基準
収益性が下がった在庫は簿価を切り下げる処理が求められます(上場会社・監査対象会社など)。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(製造・14業務)
- 「棚卸」を含む14業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
14手順のうち3つは、自動化の候補です
よくある質問
- 仕掛品はどう評価しますか。
- 工程ごとに、材料費にそこまでの加工費を加えた原価で評価する方法が一般的です。工程ごとの標準原価を決めておくと計算が早くなります。
- 棚卸札の集計に時間がかかります。
- 手書きの棚卸札は ジンベイ GenOCR で読み取ってデータにできます。帳簿との差異一覧の作成は ジンベイ GenRPA で自動化できます。
- 循環棚卸とは何ですか。
- 全品目を一度に数えるのではなく、毎月一部の品目やエリアを順に数える方法です。差異を早く見つけられ、期末の負担も減ります。