新規取引の口座開設の業務手順書テンプレート(卸売業)
新規取引の口座開設は、新しい得意先と掛売りの取引を始める前に、相手の実在・信用・反社会的勢力との関係を確かめ、与信枠と締め・支払条件を決めて、得意先マスタに登録する業務です。手順書にしておくと、調べないまま掛売りを始めて代金を回収できなくなる事態や、取引条件の行き違いを防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 新規の得意先と、確認を済ませたうえで、合意した条件で取引を始められるようにします。
- 範囲
- 営業からの口座開設の依頼から、調査・与信枠の決定・契約・マスタ登録・初回出荷まで。仕入先の新規登録は対象外です。
- 始まるきっかけ
- 営業担当が新規の得意先から継続的な掛取引の申し込みを受けたとき。
- 頻度・量の目安
- 随時。月2〜20件
- 使う書類・システム
- 取引申込書(会社概要・代表者・取引銀行・決算情報)、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、信用調査会社のレポート、反社チェックの記録台帳、取引基本契約書、得意先マスタ
担当と役割
営業担当
取引申込書の回収、相手先の情報の聞き取り
与信管理(営業管理・経理)
登記・反社・信用調査、与信枠の案の作成
営業部長・管理部長
与信枠と取引条件の承認
マスタ管理担当
得意先マスタの登録
手順(13ステップ)
- 申込営業担当・目安 1日
1. 取引申込書を相手先に記入してもらう
商号・所在地・代表者・設立年・資本金・年商・主な仕入先・取引銀行・希望の締め日と支払日・月の取引見込額を書いてもらいます。
- 確かめること
- 空欄がないか。月の取引見込額が書かれているか
- できあがるもの
- 取引申込書
2. 社内の口座開設依頼書を出す
取引のきっかけ、扱う商品、見込みの売上と粗利、配送方法を書きます。
- 確かめること
- 紹介者・きっかけを書いたか
- できあがるもの
- 口座開設依頼書
3. 登記事項証明書で会社の実在を確かめる
商号・本店・代表者・設立年月日・目的が申込書と同じか確かめます。最近の本店移転・役員の大幅な交代・商号変更に注意します。
- 確かめること
- 申込書との違いがないか
- できあがるもの
- 登記の確認記録
- 反社確認与信管理・目安 15分
4. 会社と代表者の反社チェックを行う
新聞記事検索・調査会社のデータベースなどで、会社名・代表者名を調べ、結果を台帳に記録します。
- 確かめること
- 該当の疑いがある場合、取引を進めずに上長に報告したか
- できあがるもの
- 反社チェックの記録
- 信用調査与信管理・目安 30分
5. 信用調査会社のレポートや決算書で信用を確かめる
評点、売上と利益の推移、自己資本比率、支払の評判を確かめます。
- 確かめること
- 赤字の連続や債務超過がないか
- できあがるもの
- 信用調査の結果
- 現地確認営業担当・目安 1〜2時間
6. 事務所・倉庫・店舗を訪問して確かめる
看板・在庫の状況・従業員の様子を見て、申込書の内容と合うか確かめます。
- 確かめること
- 事業の実態があるか
- できあがるもの
- 訪問記録
- 与信枠与信管理・目安 15分
7. 与信枠の案を作る
月の取引見込額×(締めから支払までの月数+1)を目安に、信用調査の結果で増減します。
- 確かめること
- 保証金・信用保険などの保全を付けるか検討したか
- できあがるもの
- 与信枠の案
- 条件営業担当・目安 30分
8. 締め日・支払日・支払方法を相手と決める
社内の標準条件(例: 月末締め翌月末払い・振込)を基本に合意します。
- 確かめること
- 社内の標準より長い支払サイトを約束していないか
- できあがるもの
- 取引条件の合意
9. 与信枠と取引条件を承認する
調査結果と与信枠の根拠を確かめて承認します。
- 確かめること
- 承認者と承認日を記録したか
- できあがるもの
- 承認記録
- 契約営業担当・目安 1〜2週間
10. 取引基本契約書を結ぶ
支払条件・所有権の移転時期・反社会的勢力の排除条項・期限の利益の喪失条項を含めます。
- 確かめること
- 反社排除条項が入っているか
- できあがるもの
- 取引基本契約書
11. 得意先マスタに登録する
得意先コード・請求先と納品先・締め日・支払日・与信枠・売価のランク・インボイスの要否を入れます。
- 確かめること
- 登録内容を依頼書と二人で照合したか
- できあがるもの
- 得意先マスタ
- 初回取引営業担当・目安 入金日
12. 初回の出荷と入金を確かめる
初回の請求が期日どおりに入金されるか確かめます。
- 確かめること
- 初回の入金が遅れていないか
- できあがるもの
- 初回入金の確認
13. 次回の見直し日を台帳に入れる
新規先は6か月後、通常は年1回の見直し日を設定します。
- 確かめること
- 見直し日が入っているか
- できあがるもの
- 与信管理台帳の更新
締めのチェックリスト
- 取引申込書の空欄がない
- 登記事項証明書と申込書の内容が一致した
- 会社と代表者の反社チェックを記録した
- 信用調査の結果を確かめた
- 現地で事業の実態を確かめた
- 与信枠の根拠を記録した
- 支払条件が社内の標準の範囲内である
- 取引基本契約書に反社排除条項がある
- 得意先マスタを二人で照合した
- 次回の与信見直し日を設定した
よくあるミスと防ぎ方
申込書だけで口座を開く
実在しない会社や、取り込み詐欺の被害にあうおそれがあります。登記と現地の確認を必ず行います。
大口の初回注文をそのまま受ける
取り込み詐欺では、初回は小口で信用をつくり、急に大口の注文を入れることがあります。新規先は与信枠を小さく始めます。
反社チェックの記録を残さない
確認したことを後から示せません。調べた日・方法・結果を台帳に残します。
測っておきたい指標
- 口座開設までの日数
- 新規先の貸倒れ件数
- 新規先の初回入金遅れの件数
この業務で残す書類の保存期間
関係する法令・規格
各都道府県の暴力団排除条例
事業者に、契約時に相手が暴力団関係者でないことを確かめる努力義務と、契約書に排除条項を入れる努力義務を定めている条例が多くあります。
インボイス制度
得意先が仕入税額控除のために適格請求書を必要とするため、自社の登録番号を請求書に載せる設定をマスタに入れます。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(卸売・商社・12業務)
- 「新規取引の口座開設」を含む12業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
13手順のうち5つは、自動化の候補です
よくある質問
- 与信枠はどう決めればよいですか。
- 月の取引見込額に、締めから入金までの月数に1を足した数を掛けた金額が目安です。信用調査の結果が弱い場合は、保証金や信用保険で保全するか、枠を小さくします。
- 反社チェックは何で調べればよいですか。
- 新聞記事データベース、インターネット検索、調査会社のデータベースなどを使います。どの方法で調べるかを社内で決め、結果を台帳に記録します。
- 口座開設の書類集めを楽にできますか。
- 申込書や登記事項証明書は ジンベイ GenOCR で読み取り、マスタ登録への転記は ジンベイ GenRPA で自動化できます。