滞留在庫の処分の業務手順書テンプレート(卸売業)
滞留在庫の処分は、長い間出荷のない在庫を定期的に洗い出し、仕入先への返品、値引きでの販売、廃棄のどれで処分するかを決めて実行する業務です。手順書にしておくと、倉庫の場所と資金を圧迫する在庫の放置や、賞味期限切れになってからの廃棄を防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 滞留在庫を早めに見つけて、損失が小さいうちに処分します。
- 範囲
- 滞留在庫の抽出から、原因の確認・処分方法の決定・返品・値引き販売・廃棄・会計処理まで。
- 始まるきっかけ
- 毎月の在庫の見直しのとき、または決算前の在庫評価のとき。
- 頻度・量の目安
- 月1回の抽出。対象は数十〜数百品目
- 使う書類・システム
- 在庫一覧(最終出荷日・最終入荷日・数量・金額)、滞留在庫の管理表、仕入先の返品条件、賞味期限・使用期限の一覧、廃棄の承認書・廃棄証明
担当と役割
在庫管理担当(仕入課)
滞留在庫の抽出と処分の取りまとめ
営業担当
値引き販売の提案、得意先への声かけ
仕入担当
仕入先への返品・引き取りの交渉
経理・管理部長
評価損・廃棄の承認と会計処理
手順(13ステップ)
1. 滞留在庫を抽出する
最終出荷日から90日・180日・1年を超えた品目と、在庫月数が6か月を超える品目を一覧にします。
- 確かめること
- 新商品(入荷から日が浅い品目)を除いたか
- できあがるもの
- 滞留在庫の一覧
2. 期限が近い在庫を抽出する
賞味期限・使用期限までの残りが、得意先の納品期限を下回る在庫を一覧にします。
- 確かめること
- 得意先に納品できなくなる日を出したか
- できあがるもの
- 期限の近い在庫の一覧
- 原因仕入担当・目安 30分
3. 滞留の原因を確かめる
発注しすぎ・得意先の取扱終了・特売の残り・モデルチェンジ・不良の返品待ちなどに分けます。
- 確かめること
- 同じ原因で他の品目も滞留していないか
- できあがるもの
- 原因の分類
- 方針在庫管理担当・目安 30分
4. 品目ごとに処分の方法の案を作る
仕入先への返品・社内の他の拠点への移動・値引き販売・アウトレット業者への売却・廃棄の順で検討します。
- 確かめること
- 損失の小さい方法から検討したか
- できあがるもの
- 処分方法の案
- 返品交渉仕入担当・目安 1〜2週間
5. 仕入先に返品・引き取りを交渉する
返品の条件(期間・手数料・未開封など)を確かめ、返品を依頼します。
- 確かめること
- 返品の条件の期限内か
- できあがるもの
- 返品の合意
- 移動在庫管理担当・目安 1日
6. 他の拠点で売れる在庫を移す
他の営業所・倉庫で出荷のある品目は在庫を移動します。
- 確かめること
- 移動の運賃が見込みの利益を下回るか
- できあがるもの
- 在庫移動の記録
- 値引き販売営業担当・目安 1〜4週間
7. 得意先に値引き販売を提案する
処分価格・数量・期限を決めて得意先に案内します。
- 確かめること
- 処分価格が承認の範囲内か
- できあがるもの
- 値引き販売の実績
- 売却在庫管理担当・目安 1〜2週間
8. アウトレット・買取業者に売却する
得意先で売れない在庫を業者に見積もってもらい、売却します。
- 確かめること
- ブランドの取り決めで横流しが禁止されていないか
- できあがるもの
- 売却の記録
9. 廃棄・評価損を承認する
処分の方法を尽くしても残る在庫について、廃棄の品目・数量・金額を承認します。
- 確かめること
- 廃棄の理由が記録されているか
- できあがるもの
- 廃棄の承認書
- 廃棄在庫管理担当・目安 1日
10. 廃棄を業者に委託し、証明を受け取る
廃棄物の処理業者に委託し、マニフェスト・廃棄証明書を受け取ります。廃棄の様子を写真に残します。
- 確かめること
- 処理業者の許可の内容と期限を確かめたか
- できあがるもの
- 廃棄証明・写真
- 会計経理・目安 30分
11. 評価損・廃棄損を会計処理する
廃棄した在庫は廃棄損、売れる見込みが下がった在庫は評価損を検討します。
- 確かめること
- 税務上の損金になる条件を満たすか確かめたか
- できあがるもの
- 会計の仕訳
12. 滞留在庫の管理表を更新する
処分の方法・数量・損失額・完了日を記録します。
- 確かめること
- 処分の完了が在庫データに反映されたか
- できあがるもの
- 管理表の更新
- 再発防止仕入担当・目安 30分
13. 発注の基準を見直す
原因が発注しすぎの場合は発注点と最小発注単位を見直します。取扱終了の情報が早く届くよう営業との連絡を決めます。
- 確かめること
- 見直しの内容を発注の設定に反映したか
- できあがるもの
- 再発防止の記録
締めのチェックリスト
- 最終出荷日と在庫月数で滞留在庫を抽出した
- 期限が近い在庫を抽出した
- 滞留の原因を分類した
- 損失の小さい処分方法から検討した
- 仕入先の返品条件の期限内に交渉した
- 処分価格が承認の範囲内である
- 廃棄に承認がある
- 廃棄証明・マニフェストを受け取った
- 評価損・廃棄損を会計処理した
- 発注の基準を見直した
よくあるミスと防ぎ方
期限が切れてから気づく
期限切れになると値引き販売もできません。得意先の納品期限を基準に、早めに抽出します。
仕入先の返品の期限を過ぎる
返品できる期間を過ぎると全て自社の損失になります。抽出のときに返品条件の期限を並べて表示します。
廃棄の証明を残さない
税務上、廃棄の事実を示せないと損金として認められないおそれがあります。廃棄証明と写真を残します。
測っておきたい指標
- 滞留在庫の金額
- 在庫月数
- 処分による損失額
- 期限切れでの廃棄額
関係する法令・規格
廃棄物処理法
事業活動で出た廃棄物は、許可を持つ処理業者に委託し、産業廃棄物の場合はマニフェストを交付します。
法人税法(棚卸資産の評価損)
評価損は、災害による損傷や著しい陳腐化などの特定の事実がある場合に限って損金に算入できます。値下がりしただけでは認められないことがあるため、税理士と確かめます。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(卸売・商社・12業務)
- 「滞留在庫の処分」を含む12業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
13手順のうち4つは、自動化の候補です
よくある質問
- 何日出荷がなければ滞留在庫とみなしますか。
- 商品の性質によります。日用品なら90日、季節品は季節の終わり、部品は1年など、分類ごとに基準を決めます。
- 滞留在庫の抽出を自動にできますか。
- 在庫データから最終出荷日・在庫月数で抽出して一覧にする作業は ジンベイ GenRPA で自動化できます。
- 評価損を計上すれば税金は減りますか。
- 会計上は計上が必要でも、税務上は特定の事実がないと損金にならないことがあります。廃棄や売却で損失を確定させるほうが確実な場合もあるため、税理士と相談します。