与信の見直しの業務手順書テンプレート(卸売業)
与信の見直しは、取引中の得意先について、年1回や危険信号が出たときに信用状況を調べ直し、与信枠を増やすか減らすか、保全を求めるかを決める業務です。手順書にしておくと、取引が増えたのに枠を見直さず回収不能が大きくなる事態や、支払遅れの兆しを見逃すことを防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 得意先ごとの与信枠を実態に合わせて更新し、貸倒れの損失を小さく抑えます。
- 範囲
- 定期見直しの対象の抽出から、調査・与信枠の決定・保全の手配・台帳の更新まで。危険信号が出たときの臨時の見直しを含みます。
- 始まるきっかけ
- 与信管理台帳の見直し日が来たとき、支払遅れ・手形のジャンプ依頼・急な大口注文などの危険信号が出たとき。
- 頻度・量の目安
- 毎月(見直し日の来た得意先)。対象は月10〜50社
- 使う書類・システム
- 与信管理台帳(与信枠・見直し日・保全)、売掛金の年齢表(期日別の残高)、入金の記録、信用調査会社のレポート・決算書、営業担当の訪問記録
担当と役割
与信管理(営業管理・経理)
対象の抽出、調査、与信枠の案
営業担当
得意先の様子の聞き取り、保全の交渉
管理部長
与信枠の変更の承認
経理
売掛残と入金状況のデータ提供
手順(13ステップ)
1. 今月の見直し対象を抽出する
与信管理台帳から見直し日が今月の得意先と、与信枠の使用率が80%を超えた得意先を一覧にします。
- 確かめること
- 使用率の高い得意先を漏らしていないか
- できあがるもの
- 見直し対象の一覧
2. 直近1年の売上・売掛残・入金状況を出す
月別の売上、最大の売掛残、期日に遅れた入金の回数を出します。
- 確かめること
- 遅れた入金の回数と日数を出したか
- できあがるもの
- 取引実績の一覧
- 年齢確認与信管理・目安 15分
3. 売掛金の年齢表で期日超過の残高を確かめる
期日を30日・60日・90日超えた残高を得意先別に見ます。
- 確かめること
- 期日超過の残高がある得意先に印をつけたか
- できあがるもの
- 期日超過の一覧
- 信用情報与信管理・目安 30分
4. 信用調査レポート・決算書を取り直す
評点の変化、売上と利益の推移、借入の増加を確かめます。
- 確かめること
- 評点が下がっていないか。赤字に転じていないか
- できあがるもの
- 信用情報の更新
- 聞き取り営業担当・目安 15分
5. 得意先の様子を報告する
担当者の交代、支払の担当者の態度の変化、仕入先の変更、在庫の急な増減などを報告します。
- 確かめること
- 支払条件の変更の依頼がなかったか
- できあがるもの
- 聞き取りの記録
- 評価与信管理・目安 15分
6. 評価点をつけて与信枠の案を作る
支払状況・信用情報・取引実績を点数にし、増枠・維持・減枠の案を作ります。
- 確かめること
- 評価の基準が全社で同じか
- できあがるもの
- 与信枠の案
- 保全与信管理・目安 15分
7. 必要に応じて保全策を考える
保証金の差し入れ、連帯保証、信用保険の付保、支払サイトの短縮などを検討します。
- 確かめること
- 減枠だけで取引に支障が出ないか
- できあがるもの
- 保全策の案
8. 与信枠の変更と保全策を承認する
根拠を確かめて承認します。
- 確かめること
- 承認者と承認日を記録したか
- できあがるもの
- 承認記録
- 通知営業担当・目安 1〜2週間
9. 減枠・保全の依頼を得意先に伝える
取引条件の変更として伝え、合意内容を書面に残します。
- 確かめること
- 合意した内容を書面にしたか
- できあがるもの
- 合意書・覚書
10. 与信管理台帳とマスタを更新する
新しい与信枠・保全・次回の見直し日を入れます。
- 確かめること
- 得意先マスタの与信枠も同じ値に変えたか
- できあがるもの
- 台帳とマスタの更新
- 危険信号与信管理・目安 30分
11. 危険信号が出た得意先を臨時に見直す
支払遅れ、手形のジャンプ依頼、急な大口注文、担当者と連絡がつかない、信用不安の噂などがあれば即日見直します。
- 確かめること
- 出荷を止めるべきか判断したか
- できあがるもの
- 臨時見直しの記録
- 危険信号営業担当・目安 1時間
12. 出荷を止める場合、得意先と支払の相談をする
未払い分の支払予定を確かめ、前金での出荷などを相談します。
- 確かめること
- 納品済みの商品の引き上げは相手の同意を得て行うか
- できあがるもの
- 支払の相談記録
- 報告与信管理・目安 30分
13. 月次で与信の状況を報告する
期日超過の残高、与信枠の超過件数、減枠・保全の実施件数を報告します。
- 確かめること
- 前月より悪化した得意先を示したか
- できあがるもの
- 月次の与信報告
締めのチェックリスト
- 見直し日の来た得意先と使用率80%超の得意先を抽出した
- 期日に遅れた入金の回数を確かめた
- 期日超過の残高を確かめた
- 信用情報を新しくした
- 営業担当の聞き取りを記録した
- 評価の基準どおりに与信枠の案を作った
- 承認を受けた
- 減枠・保全の合意を書面にした
- 台帳と得意先マスタの与信枠が一致している
- 次回の見直し日を入れた
よくあるミスと防ぎ方
取引が増えても枠を見直さない
気づくと枠を大きく超えた売掛残になっています。使用率80%を超えたら見直す決まりにします。
営業担当の情報が届かない
支払担当者の態度の変化などは営業担当しか気づきません。毎月の聞き取りの欄を台帳に設けます。
納品済みの商品を無断で引き上げる
相手の同意なく持ち出すと違法になるおそれがあります。引き上げは書面の同意を得てから行います。
測っておきたい指標
- 期日超過の売掛残高
- 与信枠の超過件数
- 貸倒れ損失額
- 与信見直しの期限内実施率
関係する法令・規格
民法(債権の消滅時効)
売掛金は、権利を行使できることを知った時から5年で時効になります(2020年4月以降に生じた債権)。長期の未回収は時効の管理も必要です。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(卸売・商社・12業務)
- 「与信の見直し」を含む12業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
13手順のうち4つは、自動化の候補です
ジンベイ GenRPA
システムへの転記や画面操作の自動化
- 手順1:今月の見直し対象を抽出する
- 手順2:直近1年の売上・売掛残・入金状況を出す
- 手順10:与信管理台帳とマスタを更新する
よくある質問
- 危険信号にはどんなものがありますか。
- 支払の遅れ、支払日の延期や手形のジャンプの依頼、急な大口注文、担当者や経理責任者の退職、主要な仕入先の取引停止、社長と連絡がつかない、といった変化です。1つでもあれば臨時の見直しをします。
- 信用保険とは何ですか。
- 得意先が倒産などで代金を払えなくなったときに、損失の一部を補う保険です。与信枠を下げたくない大口の得意先に使われます。
- 与信の見直しの作業を減らせますか。
- 売掛残と入金遅れの集計は ジンベイ GenRPA で自動化できます。与信管理台帳と承認の流れは ジンベイ GenApp で仕組みにできます。