月次記帳・巡回監査の業務手順書テンプレート(士業事務所)
顧問先から毎月の資料を集め、仕訳を入力し、試算表を作って報告するまでの流れです。手順書にすると、資料の回収漏れ、インボイスの要件確認漏れ、担当者ごとの処理のばらつきを防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 担当者が替わっても、同じ締めの日程と確認項目で月次の試算表を出せるようにします。
- 範囲
- 月初の資料回収から、試算表の報告と業務処理簿への記録までです。決算・申告は「法人決算・申告」で扱います。
- 始まるきっかけ
- 毎月の資料回収日(例: 毎月5日)が来たとき
- 頻度・量の目安
- 月1回・担当者1人あたり顧問先20〜40件
- 使う書類・システム
- 領収書・請求書(紙・PDF)、通帳のコピー・入出金明細データ、売上・仕入の一覧表、会計ソフト
担当と役割
担当者(監査担当)
資料の回収、仕訳の確認、顧問先への報告
入力スタッフ
証憑の読み取り、仕訳入力、通帳との照合
税理士(所長・担当税理士)
異常値の確認、税務判断、報告内容の承認
手順(12ステップ)
1. 顧問先に当月の資料提出を依頼する
提出物の一覧(通帳、領収書、請求書、売上集計、給与台帳)と期限を連絡します。
- 確かめること
- 前月に不足した資料がある顧問先には、名前を挙げて依頼する。
- できあがるもの
- 提出依頼の記録
- 回収担当者・目安 15分
2. 届いた資料を一覧と照らして受領する
資料回収チェック表に、受領日と不足分を入れます。
- 確かめること
- 通帳は前月末の残高から当月末までページが途切れていないか確かめる。
- できあがるもの
- 資料回収チェック表
3. 領収書・請求書を読み取って仕訳の候補を作る
日付、取引先、金額、税率、登録番号を読み取り、勘定科目の候補をつけます。
- 確かめること
- 読み取った合計額と、束ごとの金額合計(電卓の検算テープなど)が一致するか確かめる。
- できあがるもの
- 仕訳候補の一覧
4. 仕入税額控除の要件を確かめる
登録番号の有無と、国税庁の公表サイトでの登録状況を確かめます。
- 確かめること
- 登録のない仕入先は、経過措置の控除割合(2026年10月から2028年9月までは70%)で処理する。
- できあがるもの
- インボイス確認済みの仕訳
5. 通帳・カードの明細を取り込んで仕訳する
入出金明細を会計ソフトに取り込み、前月までの学習ルールで科目をつけます。
- 確かめること
- 自動でついた科目のうち、初めての取引先と金額の大きいもの(例: 10万円以上)は目で確かめる。
- できあがるもの
- 通帳の仕訳
- 照合入力スタッフ・目安 15分
6. 現預金の残高を照合する
会計ソフトの預金残高と通帳の月末残高、現金残高と現金出納帳を照合します。
- 確かめること
- 差額がゼロになるまで原因を探す。
- できあがるもの
- 残高照合の記録
- 確認担当者・目安 30分
7. 仕訳の内容を確かめる
科目の誤り、消費税区分の誤り、二重計上がないかを確かめます。
- 確かめること
- 前月・前年同月と比べて20%以上増減した科目は内容を見る。
- できあがるもの
- 確認済みの仕訳
- 確認担当者・目安 10分
8. 電子取引データの保存状況を確かめる
メールやWebで受け取った請求書・領収書のデータが、検索できる状態で保存されているか顧問先に確かめます。
- 確かめること
- 紙に印刷しただけで済ませていないか確かめる。
- できあがるもの
- 電子取引の確認メモ
- 試算表担当者・目安 20分
9. 月次試算表を作る
貸借対照表と損益計算書、前年同月比、資金繰りの見込みをまとめます。
- 確かめること
- 仮払金・仮受金・未確定の科目に残高が残っていたら、理由をメモに書く。
- できあがるもの
- 月次試算表
- 承認税理士・目安 15分
10. 試算表と税務上の論点を確かめる
役員への支払い、交際費、高額の修繕費など、税務判断が必要な取引を確かめます。
- 確かめること
- 判断の根拠を業務メモに残す。
- できあがるもの
- 承認済みの試算表
- 報告担当者・目安 30〜60分
11. 顧問先に試算表を報告する
訪問またはオンラインで、売上・利益の推移、資金繰り、納税の予定を説明します。
- 確かめること
- 次の申告・納付の期限(源泉所得税の納付など)を伝える。
- できあがるもの
- 報告記録
12. 業務処理簿に記録する
顧問先名、業務の内容(月次記帳・監査)、実施日、報告日を記録します。
- 確かめること
- 当日中に記録する。
- できあがるもの
- 業務処理簿の1行
締めのチェックリスト
- 当月の資料をすべて受領した
- 通帳のページが途切れていない
- 登録番号のない仕入先を経過措置で処理した
- 現預金の残高が通帳・出納帳と一致している
- 前年同月比20%以上の増減科目を確かめた
- 電子取引データの保存状況を確かめた
- 仮払金・仮受金の残高に理由がある
- 税務判断の根拠を記録した
- 次の納付期限を顧問先に伝えた
- 業務処理簿に記録した
よくあるミスと防ぎ方
インボイスの登録状況を確かめない
請求書に番号が書かれていても、登録が取り消されていることがあります。国税庁の公表サイトで確かめる手順を入れます。
電子取引データを印刷保存で済ませる
2024年1月から、電子で受け取った取引情報はデータのまま保存する必要があります。顧問先の保存方法を年に1回は確かめます。
資料の不足に気づかず試算表を出す
通帳の一部が抜けていても、残高照合をしなければ気づきません。残高照合を試算表作成の前提にします。
測っておきたい指標
- 資料回収の完了日(期限からの遅れ日数)
- 月次試算表の報告日(翌月何日か)
- 仕訳の修正件数
この業務で残す書類の保存期間
関係する法令・規格
税理士法
税理士業務の処理簿の作成と保存、守秘義務、書面添付に関わります。
インボイス制度(消費税法)
仕入税額控除の要件、登録のない事業者からの仕入の経過措置に関わります。
電子帳簿保存法
電子取引データの保存(2024年1月から紙での保存は原則不可)、スキャナ保存の要件に関わります。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(士業・10業務)
- 「月次記帳・巡回監査」を含む10業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
12手順のうち5つは、自動化の候補です
よくある質問
- 自動仕訳はどこまで任せてよいですか。
- 繰り返しの取引は学習ルールに任せ、初めての取引先と高額の取引は人が確かめる運用が一般的です。誤りが続く科目はルールを直します。
- 登録のない事業者からの仕入はどう処理しますか。
- 令和8年度の税制改正で経過措置が見直され、2026年10月1日から2028年9月30日までは仕入税額の70%を控除できます(その後は50%、30%と段階的に下がります)。会計ソフトの税区分を期間ごとに分けて管理します。
- 業務処理簿は何年保存しますか。
- 税理士業務の処理簿は、閉鎖後5年間保存します。顧問先ごと・業務ごとに日付と内容を残します。