法律相談の受付と利益相反チェックの業務手順書テンプレート(士業事務所)
法律相談の問い合わせを受け、相談者と相手方の情報を聞き取り、過去の事件記録と照らして利益相反がないかを確かめてから相談を行う流れです。手順書にすると、受けてはいけない相談を受けてしまう事故や、記録の残し漏れを防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 相談の前に必ず利益相反の確認を行い、その結果を記録として残せるようにします。
- 範囲
- 電話・Web からの問い合わせを受けてから、初回相談を行い、受任するか判断するまでです。受任後の委任契約は「事件の受任・委任契約」で扱います。
- 始まるきっかけ
- 電話・Web フォーム・紹介で法律相談の問い合わせがあったとき
- 頻度・量の目安
- 毎日・事務所全体で1日2〜15件
- 使う書類・システム
- 問い合わせの内容(電話メモ・フォーム)、事件記録・案件管理台帳、利益相反チェック記録、相談票
担当と役割
事務職員(受付)
問い合わせの受付、相談者・相手方の聞き取り、日程調整
弁護士
利益相反の最終判断、法律相談、受任の判断
事務局長
事件記録・相談記録の管理
手順(11ステップ)
1. 問い合わせの内容を聞き取る
相談者の氏名・連絡先、相談の分野(離婚・相続・債権回収・労働など)、相談の概要を相談票に入れます。
- 確かめること
- この時点では事実の詳細を深く聞かない。相手方の情報を先に確かめる。
- できあがるもの
- 相談票
- 聞き取り事務職員・目安 5分
2. 相手方と関係者の名前を聞き取る
相手方の氏名・会社名、相手方の代理人、関係する会社・親族の名前を聞きます。
- 確かめること
- 会社なら正式名称と旧社名・グループ会社名も聞く。
- できあがるもの
- 関係者の一覧
3. 事件記録と相談記録を検索する
相談者・相手方・関係者の名前で、過去と現在の事件記録・相談記録を検索します。
- 確かめること
- ふりがな・旧姓・略称でも検索する。
- できあがるもの
- 検索結果
- 照合事務職員・目安 10分
4. 所属弁護士の個人的な関係を確かめる
相手方が所属弁護士の顧問先や親族でないかを、全弁護士に照会します。
- 確かめること
- 事務所内の連絡ツールで照会し、回答を記録する。
- できあがるもの
- 照会記録
- 判断弁護士・目安 10分
5. 受任できない事件に当たらないか判断する
相手方から以前相談を受けて助言した事件、相手方から受任している事件、現在の依頼者を相手方とする事件などに当たらないかを見ます。
- 確かめること
- 当たる場合は相談を断る。理由は相談者に詳しく伝えない。
- できあがるもの
- 利益相反チェック記録
- 日程事務職員・目安 5分
6. 相談日時と持ち物を案内する
日時、場所またはオンライン、相談料、持参してほしい資料(契約書、やり取りの記録など)を伝えます。
- 確かめること
- 相談料の額と支払方法を事前に伝える。
- できあがるもの
- 相談予約の記録
- 確認事務職員・目安 3分
7. 相談者の本人確認を行う
来所時に運転免許証などで本人を確かめます。代理人や家族が来た場合は、本人との関係と相談の意思を確かめます。
- 確かめること
- 確認した書類の種類を記録する。
- できあがるもの
- 本人確認の記録
- 相談弁護士・目安 30〜60分
8. 法律相談を行う
事実関係、相談者の希望、証拠の有無を聞き、見通しと選択肢を説明します。
- 確かめること
- 時効や期限が迫る事案(消滅時効、控訴期限など)がないかを最初に確かめる。
- できあがるもの
- 相談メモ
- 説明弁護士・目安 10分
9. 受任する場合の費用の目安を説明する
着手金・報酬金・実費の考え方と、事務所の報酬基準を説明します。
- 確かめること
- 見積が必要なら、後日書面で出すことを伝える。
- できあがるもの
- 費用説明の記録
10. 相談記録を事件記録・案件管理台帳に入れる
相談日、相談者、相手方、分野、担当弁護士、受任の有無を入れます。
- 確かめること
- 受任しなかった相談も、利益相反の照合のため記録に残す。
- できあがるもの
- 相談記録の1行
11. 受任を検討中の相談者に連絡する
相談者の検討の期限を決め、期限に連絡します。
- 確かめること
- 連絡しても返事がない場合、受任しないことを書面で伝える運用にする。
- できあがるもの
- フォロー記録
締めのチェックリスト
- 相手方・関係者の名前を聞き取った
- ふりがな・旧姓・旧社名でも検索した
- 全弁護士に個人的な関係を照会した
- 弁護士が利益相反の有無を判断した
- 利益相反チェックの結果を記録した
- 相談料を事前に伝えた
- 相談者の本人確認を行った
- 時効・期限が迫る事案か確かめた
- 受任しなかった相談も記録に残した
よくあるミスと防ぎ方
相手方の名前を聞かずに相談を受ける
相談を受けたあとで相手方が既存の依頼者だとわかると、その後どちらの依頼も受けられなくなることがあります。相手方の聞き取りと照合を相談の前に必ず行います。
受任しなかった相談を記録しない
相談を受けただけでも、相手方からの依頼を受けられなくなる場合があります。受任しなかった相談も記録して照合の対象にします。
時効の確認が遅れる
相談者が期限に気づいていないことがあります。相談の最初に時効・期限を確かめる項目を相談票に入れます。
測っておきたい指標
- 問い合わせから相談までの日数
- 利益相反チェックの記録率(100%が基準)
- 相談からの受任率
関係する法令・規格
弁護士法
職務を行い得ない事件(相手方の協議を受けて賛助した事件など)に関わります。
弁護士職務基本規程(日本弁護士連合会)
利益相反の確認、事件情報の記録、受任の際の説明に関わります。
依頼者の身元確認及び記録保存等に関する規程(日本弁護士連合会)
依頼者の本人確認と記録の保存に関わります。
個人情報保護法
相談者・相手方の個人情報の取扱いに関わります。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(士業・10業務)
- 「法律相談の受付と利益相反チェック」を含む10業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
11手順のうち4つは、自動化の候補です
よくある質問
- 相談だけでも利益相反の確認は必要ですか。
- 必要です。相談を受けて助言した事件は、相手方からの依頼を受けられなくなる場合があります。相談の前に確認します。
- 相手方の名前を相談者が言いたがらない場合は。
- 相手方がわからないと確認ができないため、相談の前に教えてもらう必要があることを説明します。
- 利益相反チェックの記録はどこまで残しますか。
- 検索した名前、検索した日、結果、判断した弁護士を残します。受任しなかった相談も記録します。