年末調整の受託の業務手順書テンプレート(士業事務所)
顧問先の従業員から申告書と控除証明書を集め、年税額を計算して過不足を精算し、源泉徴収票と法定調書・給与支払報告書を出すまでの流れです。手順書にすると、書類の回収漏れや控除の誤り、1月末の提出遅れを防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 毎年の年末調整を、顧問先ごとに同じ日程・同じ確認項目で進められるようにします。
- 範囲
- 11月の申告書の配布から、翌年1月31日の法定調書・給与支払報告書の提出までです。
- 始まるきっかけ
- 毎年11月上旬(顧問先との事前打ち合わせのあと)
- 頻度・量の目安
- 年1回・顧問先1件あたり従業員5〜100名
- 使う書類・システム
- 扶養控除等(異動)申告書、基礎控除申告書などの兼用様式、保険料控除申告書・各種控除証明書、住宅借入金等特別控除申告書、給与台帳(1〜12月)
担当と役割
担当者
顧問先との日程調整、書類の回収と確認
入力スタッフ
申告書の内容の入力、控除証明書の照合
税理士・社会保険労務士
判断が必要な控除の確認、計算結果の承認
手順(14ステップ)
- 準備担当者・目安 1時間
1. 当年分の改正点と様式を確かめる
国税庁の「年末調整のしかた」と当年分の様式で、控除額や申告書の変更点を確かめます。
- 確かめること
- 前年の様式を使い回していないか確かめる。
- できあがるもの
- 改正点のメモ
2. 顧問先に申告書と記入例を配る
従業員向けの記入例、回収期限、提出先を顧問先に送ります。
- 確かめること
- 回収期限は計算の日程から逆算する(例: 11月末)。
- できあがるもの
- 配布記録
3. 従業員ごとの回収状況を管理する
年末調整の書類回収チェック表に、申告書・証明書の受領を入れます。
- 確かめること
- 期限の3日前に未提出者の一覧を顧問先に送る。
- できあがるもの
- 回収チェック表
4. 申告書の内容を読み取って入力する
扶養親族の氏名・続柄・生年月日・所得の見積額、保険料の金額を入れます。
- 確かめること
- 扶養親族の所得の見積額が控除の要件の範囲内か確かめる。
- できあがるもの
- 入力済みの申告データ
5. 控除証明書と申告額を照合する
生命保険料・地震保険料・社会保険料(国民年金など)の証明書の金額と、申告書の金額を照合します。
- 確かめること
- 証明書の「申告額」欄(年末見込額)を使っているか確かめる。
- できあがるもの
- 照合済みの控除額
- 確認入力スタッフ・目安 1名5分
6. 住宅借入金等特別控除の書類を確かめる
2年目以降は税務署発行の申告書と金融機関の残高証明書をそろえます。
- 確かめること
- 控除額の計算に使う年末残高と、申告書の記載が一致している。
- できあがるもの
- 住宅ローン控除の確認
- 判断税理士・社会保険労務士・目安 30分
7. 判断が必要な扶養・控除を確かめる
年の途中で就職・退職した扶養親族、16歳未満の扶養親族、障害者控除などを確かめます。
- 確かめること
- 判断した内容と根拠を記録する。
- できあがるもの
- 判断の記録
8. 前職分を含めて年税額を計算する
中途入社の従業員は前職の源泉徴収票の金額を合算します。
- 確かめること
- 前職の源泉徴収票がない従業員は、年末調整の対象から外して本人に確定申告を案内する。
- できあがるもの
- 年税額の計算結果
- 精算担当者・目安 30分
9. 過不足額を顧問先に伝え、給与で精算する
12月の給与または賞与での還付・徴収額を顧問先の給与担当に伝えます。
- 確かめること
- 還付額が12月の源泉税で足りない場合の扱いを顧問先と決めておく。
- できあがるもの
- 過不足の一覧
10. 源泉徴収票を作成し、従業員に交付する
給与所得の源泉徴収票を作り、顧問先経由で従業員に渡します。
- 確かめること
- 翌年1月31日までに交付する。
- できあがるもの
- 源泉徴収票
11. 法定調書合計表と源泉徴収票を税務署に出す
提出の範囲(役員で年150万円超、従業員で年500万円超など)に当たる源泉徴収票を合計表とあわせて出します。
- 確かめること
- 前々年の提出枚数が30枚以上なら e-Tax などでの提出が必要。
- できあがるもの
- 法定調書の提出控え
12. 給与支払報告書を市区町村に出す
従業員の1月1日時点の住所地の市区町村ごとに、総括表と個人別明細書を出します。
- 確かめること
- eLTAX での提出を基本にし、1月31日までに出す。
- できあがるもの
- 給与支払報告書の提出控え
- 納付担当者・目安 5分
13. 源泉所得税の納付期限を伝える
12月分(年末調整の精算後)の源泉所得税の納付期限を顧問先に伝えます。
- 確かめること
- 原則は翌月10日、納期の特例は1月20日。
- できあがるもの
- 納付案内
- 保管担当者・目安 15分
14. 申告書と特定個人情報を保管する
申告書は7年間保存し、マイナンバーが書かれた書類はアクセスを制限した場所に置きます。
- 確かめること
- 保存期間を過ぎた書類は、廃棄の記録を残して廃棄する。
- できあがるもの
- 保管記録
締めのチェックリスト
- 当年分の様式と改正点を確かめた
- 全従業員の申告書を回収した
- 扶養親族の所得の見積額を確かめた
- 控除証明書の金額と申告額が一致している
- 中途入社者の前職分を合算した
- 過不足額を顧問先の給与担当に伝えた
- 源泉徴収票を1月31日までに交付した
- 法定調書合計表を期限内に出した
- 給与支払報告書を住所地の市区町村ごとに出した
- マイナンバーを含む書類をアクセス制限して保管した
よくあるミスと防ぎ方
前年の様式を使い回す
控除額や申告書の様式は改正で変わることがあります。毎年、国税庁の当年分の様式と「年末調整のしかた」を確かめてから配布します。
前職の源泉徴収票の合算漏れ
中途入社者の前職分を入れずに計算すると、年税額が少なくなります。入社時の書類回収の段階で前職の源泉徴収票を集めておきます。
給与支払報告書の提出先の誤り
提出先は1月1日時点の住所地の市区町村です。年末に引っ越した従業員の住所を確かめます。
測っておきたい指標
- 申告書の回収完了日
- 年末調整のやり直し件数
- 法定調書・給与支払報告書の期限内提出率
関係する法令・規格
所得税法
年末調整、各種控除の申告書、源泉徴収票の交付と提出に関わります。
地方税法
給与支払報告書の市区町村への提出(1月31日まで)に関わります。
番号法(マイナンバー法)
申告書に書かれた個人番号の安全管理と、委託を受けた事務所としての取扱いに関わります。
税理士法・社会保険労務士法
業務の範囲と守秘義務に関わります。税額の計算と税務書類の作成は税理士業務に当たります。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(士業・10業務)
- 「年末調整の受託」を含む10業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
14手順のうち8つは、自動化の候補です
ジンベイ GenRPA
システムへの転記や画面操作の自動化
- 手順8:前職分を含めて年税額を計算する
- 手順10:源泉徴収票を作成し、従業員に交付する
- 手順11:法定調書合計表と源泉徴収票を税務署に出す
- 手順12:給与支払報告書を市区町村に出す
よくある質問
- 年末調整の対象にならない人は。
- 年の給与収入が2,000万円を超える人、2か所以上から給与を受けていて「扶養控除等申告書」を出していない人などは対象外です。本人に確定申告を案内します。
- 社労士事務所が年末調整を受けてもよいですか。
- 税額の計算や税務書類の作成は税理士業務に当たるため、社労士事務所が単独で行うことはできません。給与計算の一部として受ける場合も、税理士と連携します。
- 申告書はいつまで保存しますか。
- 扶養控除等申告書などは、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存します。