不動産登記(売買)の申請の業務手順書テンプレート(士業事務所)
不動産売買の依頼を受け、登記簿と必要書類を確かめ、決済の場で本人と意思を確認し、所有権移転登記を申請して完了書類を渡すまでの流れです。手順書にすると、書類の期限切れや本人確認の漏れ、申請の誤りを防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 決済日に向けて、書類の準備と本人確認を同じ確認項目で行い、決済当日の申請を確実に行えるようにします。
- 範囲
- 不動産会社・金融機関からの依頼を受けてから、登記完了後の書類の交付までです。
- 始まるきっかけ
- 不動産会社・金融機関から売買の決済と登記の依頼があったとき
- 頻度・量の目安
- 随時・事務所全体で月5〜50件
- 使う書類・システム
- 登記事項証明書、登記識別情報(または登記済証)、印鑑証明書・住民票、固定資産評価証明書、売買契約書
担当と役割
司法書士
登記簿の調査、本人確認と意思確認、決済の立会い、申請
補助者
書類の回収と点検、申請書の作成、登録免許税の計算
事務職員
日程調整、完了書類の発送
手順(12ステップ)
1. 依頼内容と決済日を受け付ける
物件、売主・買主、決済日時と場所、抵当権の抹消・設定の有無を受付票に入れます。
- 確かめること
- 決済日から逆算して書類の回収期限を決める。
- できあがるもの
- 受付票
2. 登記簿を取得して内容を確かめる
所有者の住所・氏名、抵当権などの権利、差押え、地目・地積を確かめます。
- 確かめること
- 登記簿の住所と売主の現住所が違えば、住所変更登記が必要になる。
- できあがるもの
- 登記簿の調査メモ
- 書類案内補助者・目安 15分
3. 必要書類を売主・買主に案内する
売主は登記識別情報、印鑑証明書、実印、本人確認書類、買主は住民票、本人確認書類などを案内します。
- 確かめること
- 必要書類チェックリストで、物件と取引の内容に合わせて書類を選ぶ。
- できあがるもの
- 必要書類の案内
4. 届いた書類の内容と期限を確かめる
印鑑証明書は作成後3か月以内か、住民票の住所と登記の住所がつながるかを確かめます。
- 確かめること
- 決済日時点で3か月を過ぎないか、作成日から計算する。
- できあがるもの
- 書類点検の記録
5. 登録免許税と費用を計算する
固定資産評価額をもとに、登記の種類ごとの税率と軽減措置の要件を確かめて計算します。
- 確かめること
- 住宅用家屋の軽減措置は、床面積・取得の時期などの要件と証明書を確かめる。
- できあがるもの
- 費用の見積書
6. 登記申請書と登記原因証明情報を作る
登記の目的、原因(年月日売買)、権利者・義務者、課税価格、登録免許税、不動産の表示を入れます。
- 確かめること
- 登記簿の不動産の表示と一字一句一致させる。
- できあがるもの
- 申請書の案
- 本人確認司法書士・目安 15分
7. 決済の前に売主・買主の本人確認と意思確認を行う
本人確認書類で本人を確かめ、売買の意思と物件・代金を確かめます。
- 確かめること
- 確認した書類の種類・番号と、確認の方法を記録する。面識がない場合は特に慎重に行う。
- できあがるもの
- 本人確認記録
- 決済司法書士・目安 30分
8. 決済の場で書類を最終確認する
登記識別情報・委任状・印鑑証明書がそろい、実印が押されているか確かめ、融資実行の可否を伝えます。
- 確かめること
- 登記簿を当日朝に再取得し、事前の調査から変わっていないか確かめる。
- できあがるもの
- 決済の確認記録
9. オンラインで登記を申請する
決済後すぐに申請し、受付番号を記録します。
- 確かめること
- 抵当権抹消・所有権移転・抵当権設定など、連件の順番が正しい。
- できあがるもの
- 受付番号
- 補正司法書士・目安 案件による
10. 法務局から補正の連絡があれば対応する
補正の内容を確かめ、期限内に補正します。
- 確かめること
- 補正の原因を記録し、次の案件の点検項目に加える。
- できあがるもの
- 補正の記録
- 完了事務職員・目安 15分
11. 完了後、登記識別情報と完了書類を交付する
登記識別情報通知、登記完了証、登記事項証明書を買主・金融機関に渡します。
- 確かめること
- 登記識別情報は目隠しシールのまま、本人に直接または書留で渡す。
- できあがるもの
- 交付の記録
12. 事件簿に記録し、預かった書類を返す
受託の日、事件の内容、報酬を事件簿に入れ、原本を返却します。
- 確かめること
- 受領・返却簿で返却漏れがない。
- できあがるもの
- 事件簿の記録
締めのチェックリスト
- 登記簿の住所と売主の現住所を照合した
- 印鑑証明書が決済日時点で作成後3か月以内である
- 住民票の住所がつながっている
- 登録免許税の軽減措置の要件と証明書を確かめた
- 申請書の不動産の表示が登記簿と一致している
- 本人確認と意思確認を行い、記録した
- 決済当日に登記簿を再取得した
- 連件の順番が正しい
- 登記識別情報を本人に安全な方法で渡した
- 預かった原本を返却した
よくあるミスと防ぎ方
印鑑証明書の期限切れ
決済日が延びて、印鑑証明書が作成後3か月を過ぎることがあります。決済日の変更があれば、書類の期限を必ず再計算します。
住所変更登記の見落とし
登記簿の住所と売主の現住所が違うと、所有権移転の前に住所変更登記が必要です。調査の段階で住所を照合します。
決済当日の権利の変化に気づかない
事前の調査後に差押えなどが入ることがあります。決済当日の朝に登記簿を再取得します。
測っておきたい指標
- 決済日までの書類回収完了率
- 補正件数
- 完了から書類交付までの日数
この業務で残す書類の保存期間
関係する法令・規格
不動産登記法・不動産登記令
登記の申請、登記識別情報、添付情報(印鑑証明書は作成後3か月以内など)に関わります。2024年4月から相続登記、2026年4月から住所等の変更登記の申請が義務になりました。
登録免許税法・租税特別措置法
登録免許税の税率と、住宅用家屋などの軽減措置に関わります。
司法書士法
業務の範囲、事件簿の作成・保存、守秘義務に関わります。
犯罪収益移転防止法
宅地・建物の売買の手続きの代理などで、取引時確認と記録の保存が必要になります。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(士業・10業務)
- 「不動産登記(売買)の申請」を含む10業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
12手順のうち7つは、自動化の候補です
よくある質問
- 印鑑証明書は何か月以内のものが必要ですか。
- 所有権の登記名義人が登記義務者として申請する場合、作成後3か月以内のものが必要です。
- 登記識別情報を紛失した売主の場合は。
- 司法書士による本人確認情報の提供などの方法があります。通常より準備に時間がかかるため、早めに確かめます。
- 住所変更登記は義務ですか。
- 2026年4月から、所有者の住所・氏名に変更があった場合、変更の日から2年以内に変更登記を申請することが義務になりました。