インシデント報告の業務手順書テンプレート(医療機関)
医療の現場でインシデント(ヒヤリハット)やアクシデントが起きたときに、患者への対応を優先し、報告書を出して医療安全管理者が分析し、委員会で改善策を決めて周知するまでの流れです。予期しない死亡の場合の医療事故調査制度の判断も含みます。手順書にしておくと、報告の遅れや、改善につながらない報告の積み上げを防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- インシデントを責めずに集め、原因を分析して再発を防ぐための手順です。
- 範囲
- 発生時の対応から、報告書の提出、分析、委員会での審議、改善策の周知と評価まで。
- 始まるきっかけ
- 誤薬・転倒・患者の取り違え・ドレーンの抜去など、患者に影響があった、または影響が出るおそれがあった事象に気づいたとき
- 頻度・量の目安
- 随時・病床数100床あたり月数十件
- 使う書類・システム
- インシデント・アクシデント報告書(電子報告システム)、診療録・看護記録、医療安全管理指針、影響度分類(レベル0〜5)
担当と役割
当事者・発見者
患者の安全確保、上長への報告、報告書の作成
所属長
状況の確認、報告書の確認、部署内の対策
医療安全管理者
報告の集計・分析、委員会への提出、改善の推進
医療安全管理委員会
重大事例の審議、改善策の決定
病院長(管理者)
医療事故調査制度の報告の判断
手順(10ステップ)
- 初動当事者・発見者・目安 即時
1. 患者の安全を確保し、医師・上長に報告する
バイタルを確認し、必要な処置を医師に依頼します。
- 確かめること
- 患者への影響を確かめ、処置が必要か判断したか
- できあがるもの
- 初動の記録
- 説明所属長・目安 15分
2. 患者・家族に事実を説明する
起きたこと、行った処置、今後の対応を、医師とともに説明します。
- 確かめること
- 説明した日時・相手・内容を診療録に記録したか
- できあがるもの
- 説明の記録
3. 報告書を決められた期限内に提出する
発生日時・場所・内容・患者への影響・行った処置・背景を書きます。影響度の高いもの(レベル3b以上など)はまず口頭で医療安全管理者に連絡します。
- 確かめること
- 事実と推測を分けて書いたか
- できあがるもの
- インシデント報告書
- 確認所属長・目安 30分
4. 報告書を確認し、部署内で原因と対策を話し合う
当事者を責めず、手順・環境・仕組みの面から話し合います。
- 確かめること
- 部署でできる対策を決めたか
- できあがるもの
- 部署の対策
5. 報告を集計し、影響度と種類で分類する
誤薬・転倒・チューブ類などの種類と、影響度で毎月集計します。
- 確かめること
- 増えている種類や部署がないか
- できあがるもの
- 月次の集計
- 分析医療安全管理者・目安 数時間〜数日
6. 重大な事例は関係者から聞き取り、根本原因を分析する
時系列で事実を整理し、なぜ起きたかを繰り返し問って原因を探ります(RCAなど)。
- 確かめること
- 個人の注意力だけを原因にしていないか
- できあがるもの
- 分析報告書
- 判断病院長(管理者)・目安 随時
7. 予期しない死亡・死産の場合は、医療事故調査制度の対象か判断する
医療に起因し、管理者が予期しなかった死亡・死産であれば、医療事故調査・支援センターに報告し、院内調査を行います。
- 確かめること
- 遺族への説明を行ったか
- できあがるもの
- センターへの報告・院内調査
- 審議医療安全管理委員会・目安 1時間
8. 重大事例と傾向を審議し、改善策を決める
手順の改訂、機器・表示の変更、教育などを決めます。
- 確かめること
- 改善策の担当と期限を決めたか
- できあがるもの
- 委員会議事録
- 周知医療安全管理者・目安 30分
9. 改善策を全職員に周知する
ニュースレター・研修・部署の朝礼で伝えます。
- 確かめること
- 周知の範囲と方法を記録したか
- できあがるもの
- 周知記録
10. 改善策の効果を評価する
同種の報告件数の推移を確認します。
- 確かめること
- 効果がない場合に対策を見直したか
- できあがるもの
- 評価記録
締めのチェックリスト
- 患者の安全を確保したか
- 患者・家族に説明し記録したか
- 期限内に報告書を出したか
- 影響度の高い事例を口頭で連絡したか
- 事実と推測を分けたか
- 部署で対策を話し合ったか
- 月次で集計したか
- 重大事例の原因を分析したか
- 医療事故調査制度の対象か判断したか
- 改善策を周知し評価したか
よくあるミスと防ぎ方
報告が少ない
報告すると責められると感じると、報告が出なくなります。報告を評価する文化と、匿名でも出せる仕組みを作ります。
報告して終わり
集計するだけで改善策がないと、報告する意欲が下がります。結果を職員に返します。
記録の書き換え
後から診療録を書き換えると信頼を失います。追記は日時と記載者を残して行います。
測っておきたい指標
- インシデント報告件数(職種別)
- レベル3b以上の件数
- 改善策の実施率
この業務で残す書類の保存期間
関係する法令・規格
医療法6条の12・医療法施行規則1条の11(医療の安全を確保するための措置)
医療機関の管理者は、医療安全管理の指針、委員会(病院・有床診療所)、職員研修、事故報告等による改善のための方策などの体制を確保します。
医療法6条の10(医療事故調査制度)
医療に起因する予期しない死亡・死産が起きた場合、管理者は医療事故調査・支援センターに報告し、院内調査を行い、結果を遺族に説明します(2015年10月施行)。
医療事故情報収集等事業
特定機能病院などは日本医療機能評価機構への事故等事案の報告が義務づけられています。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(医療・介護・12業務)
- 「インシデント報告」を含む12業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
10手順のうち3つは、自動化の候補です
よくある質問
- インシデントとアクシデントの違いは
- 一般に、患者に影響がなかった、または軽い影響にとどまったものをインシデント、処置や治療が必要になったものをアクシデントと呼びます。施設の影響度分類で定義します。
- 医療事故調査制度の対象は
- 医療に起因し、管理者が予期しなかった死亡・死産です。対象かどうかは管理者が判断し、センターに相談することもできます。
- 報告の集計を楽にするには
- 報告をジンベイ GenAppのフォームで集め、種類・影響度・部署で自動集計すると、委員会の資料作りが早くなります。