預金の相続手続の業務手順書テンプレート(金融機関)
預金者が亡くなったという連絡を受けて口座の取引を止め、相続の方法(遺言・遺産分割協議・調停)に応じて必要書類を案内し、書類を確かめて払戻しや名義変更を行うまでの流れです。手順書にしておくと、書類の案内の誤りや、相続人の確認漏れによる誤った払戻しを防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 正しい相続人に、正しい書類にもとづいて預金を払い戻すための手順です。
- 範囲
- 死亡の連絡の受付から、取引の停止、残高証明、必要書類の案内と確認、払戻し・名義変更、記録まで。
- 始まるきっかけ
- 家族から預金者が亡くなったと連絡があったとき、または死亡を知ったとき
- 頻度・量の目安
- 随時・営業店1か所あたり月数件〜数十件
- 使う書類・システム
- 相続手続依頼書、被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)または法定相続情報一覧図、相続人の戸籍謄本・印鑑証明書、遺言書・遺産分割協議書・調停調書など、通帳・キャッシュカード
担当と役割
窓口担当
連絡の受付、書類の案内、受付
相続事務担当(本部・センター)
書類の審査、相続人の確定、払戻しの処理
役席者
審査結果の確認と承認
相続人
書類の準備と提出
手順(11ステップ)
1. 死亡の連絡を受け、取引を止める
被相続人の氏名・生年月日・死亡日、連絡者と続柄を聞き、口座の入出金を止めます。
- 確かめること
- 口座振替(公共料金など)が止まることを伝えたか
- できあがるもの
- 受付記録・取引停止
- 確認窓口担当・目安 15分
2. 被相続人のすべての取引を調べる
預金・定期預金・投資信託・貸金庫・融資の有無を確認します。
- 確かめること
- 融資や貸金庫があることを伝えたか
- できあがるもの
- 取引の一覧
- 残高窓口担当・目安 10分
3. 必要に応じて残高証明書を発行する
相続税の申告や遺産分割の協議のため、死亡日時点の残高証明書を発行します。
- 確かめること
- 依頼者が相続人であることを確かめたか
- できあがるもの
- 残高証明書
- 案内窓口担当・目安 20分
4. 相続の方法を聞き、必要書類を案内する
遺言書がある・遺産分割協議をした・調停や審判で決めた、のどれかによって書類が変わることを一覧で伝えます。
- 確かめること
- 法定相続情報一覧図を使えば戸籍の束を出さなくてよいことを伝えたか
- できあがるもの
- 書類の案内
- 仮払い窓口担当・目安 20分
5. 遺産分割の前に払戻しを求められたら、預貯金の仮払い制度を案内する
相続人が単独で、法定の上限額まで払戻しを受けられる制度です。
- 確かめること
- 上限額の計算(口座ごとの残高×1/3×法定相続分、1金融機関あたりの上限)を正しく行ったか
- できあがるもの
- 仮払いの記録
6. 届いた書類を受け付ける
原本を確かめ、写しを取って原本を返します。
- 確かめること
- 印鑑証明書の発行日(社内基準の期限内)を確かめたか
- できあがるもの
- 受付記録
- 審査相続事務担当(本部・センター)・目安 30分〜
7. 戸籍から相続人を確定する
被相続人の出生から死亡までの戸籍で、配偶者・子・前婚の子・養子などを確認します。
- 確かめること
- 相続人の漏れがないか
- できあがるもの
- 相続人の確定記録
- 審査相続事務担当(本部・センター)・目安 30分
8. 遺言書・遺産分割協議書の内容を確かめる
自筆証書遺言は家庭裁判所の検認済みか(法務局に保管されていたものは不要)、協議書に相続人全員の署名と実印があるかを確認します。
- 確かめること
- 預金が誰に帰属するかが明確か
- できあがるもの
- 審査結果
9. 審査結果を確認し、承認する
相続人・払戻し先・金額を確認します。
- 確かめること
- 払戻し先が正しい相続人の口座か
- できあがるもの
- 承認記録
10. 払戻し・名義変更を行い、計算書を送る
利息の計算を含め、払戻しの明細を送ります。
- 確かめること
- 全取引(定期・投資信託)の処理が終わったか
- できあがるもの
- 払戻し・計算書
11. 手続きの記録と書類の写しを保存する
受付から完了までの記録を残します。
- 確かめること
- 完了の連絡を相続人に入れたか
- できあがるもの
- 完了の記録
締めのチェックリスト
- 死亡の連絡を受けて取引を止めたか
- 全取引を調べたか
- 依頼者が相続人か確かめたか
- 相続の方法に応じた書類を案内したか
- 法定相続情報一覧図を案内したか
- 仮払いの上限を正しく計算したか
- 印鑑証明書の期限を確かめたか
- 相続人の漏れがないか
- 遺言書の検認の要否を確かめたか
- 承認を得て払い戻したか
よくあるミスと防ぎ方
相続人の確認漏れ
前婚の子や認知した子を見落とすと、誤った払戻しになります。出生から死亡までの戸籍で確かめます。
書類の案内の誤り
相続の方法で書類が変わるのに一律に案内すると、相続人が何度も来店することになります。方法ごとの一覧で案内します。
自筆証書遺言の検認の確認漏れ
家庭裁判所の検認が必要な遺言を、検認なしで受け付けてしまうことがあります。法務局の保管制度を使ったものかを確かめます。
測っておきたい指標
- 受付から払戻しまでの日数
- 書類の再提出の件数
- 来店回数(相続人1人あたり)
関係する法令・規格
民法909条の2(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
各相続人は、遺産分割の前でも、口座ごとの残高の3分の1に法定相続分をかけた額まで(同じ金融機関で法務省令の上限あり)、単独で払戻しを受けられます(2019年7月施行)。
民法1004条(遺言書の検認)
自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要です。法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が不要です。
法定相続情報証明制度(2017年5月開始)
法務局が交付する法定相続情報一覧図の写しを、戸籍謄本の束の代わりに使えます。
犯罪収益移転防止法
200万円を超える現金の受払いなど特定取引に当たる場合は取引時確認が必要です。それ以外でも、払戻しを受ける相続人の本人確認を行います。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(金融・保険・12業務)
- 「預金の相続手続」を含む12業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
11手順のうち5つは、自動化の候補です
よくある質問
- 口座が凍結されると公共料金はどうなりますか
- 口座振替ができなくなるため、引落し先の変更を相続人に案内します。
- 葬儀費用を払いたいので一部だけ下ろせますか
- 預貯金の仮払い制度により、相続人が単独で一定額まで払戻しを受けられます。必要書類は戸籍謄本などです。
- 書類の審査を楽にするには
- 戸籍や法定相続情報一覧図をジンベイ GenOCRで読み取り、相続人の一覧を自動で作ると、確認の時間を減らせます。最終確認は担当者が行います。