疑わしい取引の届出の業務手順書テンプレート(金融機関)
取引のモニタリングや窓口での気づきから疑わしい取引を見つけ、営業店が報告し、統括部署が調査して届出の要否を判断し、行政庁に届け出て記録を残すまでの流れです。手順書にしておくと、報告の遅れや、判断の根拠が残らない状態、顧客に届出を知られるおそれを防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- マネー・ローンダリングにつながる取引を見逃さず、法令どおりに届け出るための手順です。
- 範囲
- 検知・気づきから、営業店の報告、調査、判断、届出、顧客管理の見直し、記録まで。
- 始まるきっかけ
- システムのアラート、窓口での不自然な取引、外部からの情報などで、疑わしい取引に気づいたとき
- 頻度・量の目安
- 随時(アラートは毎日)
- 使う書類・システム
- 取引モニタリングのアラート、顧客情報・取引時確認の記録、取引記録、疑わしい取引の参考事例(金融庁)、疑わしい取引の届出の記録
担当と役割
窓口・営業店担当
不自然な取引への気づき、営業店内の報告
営業店の責任者
内容の確認、統括部署への報告
マネロン対策の統括部署
アラートの調査、届出の判断、届出
統括管理者
届出の最終判断、体制の管理
手順(10ステップ)
1. モニタリングのアラートを確かめる
短期間の多額の入出金、口座開設直後の大口取引、顧客の属性に合わない取引などのアラートを確認します。
- 確かめること
- 誤検知の理由を記録したか
- できあがるもの
- アラートの確認記録
- 気づき窓口・営業店担当・目安 10分
2. 窓口で不自然な取引に気づいたら、営業店の責任者に報告する
取引の目的があいまい、他人名義の通帳を多く持つ、本人確認を嫌がるなどの様子を記録します。
- 確かめること
- 顧客に疑っていることを伝えていないか
- できあがるもの
- 営業店内の報告
3. 統括部署に報告する
顧客情報、取引の内容、気づいた点を報告書にまとめます。
- 確かめること
- 報告の期限(当日中など)を守ったか
- できあがるもの
- 営業店からの報告書
- 調査マネロン対策の統括部署・目安 1件30分〜
4. 顧客と取引を調べる
取引時確認の内容、過去の取引、関係する口座、外部の情報を確かめます。
- 確かめること
- 参考事例のどれに当たるか、当たらないかを整理したか
- できあがるもの
- 調査記録
5. 届出の要否を判断する
収受した財産が犯罪による収益である疑いがあるか、または顧客が犯罪収益の隠匿をしている疑いがあるかで判断します。
- 確かめること
- 判断の根拠を記録したか
- できあがるもの
- 判断記録
- 届出マネロン対策の統括部署・目安 30分
6. 速やかに行政庁に届け出る
電子申請システムで、顧客情報・取引の内容・疑わしいと判断した理由を届け出ます。
- 確かめること
- 届出の内容に理由が具体的に書かれているか
- できあがるもの
- 届出の控え
- 秘密営業店の責任者・目安 ―
7. 届出をしたことや、しようとしていることを顧客に知らせない
顧客から聞かれても答えず、職員にも必要な範囲だけ伝えます。
- 確かめること
- 情報を知る職員を限っているか
- できあがるもの
- ―
- 顧客管理マネロン対策の統括部署・目安 15分
8. 顧客のリスク評価を見直し、取引の扱いを決める
継続的な顧客管理の頻度を上げる、取引の制限を検討するなどを決めます。
- 確かめること
- リスク評価を更新したか
- できあがるもの
- 顧客リスクの更新
9. 調査・判断・届出の記録を保存する
届け出なかった場合も、判断の根拠を残します。
- 確かめること
- 届け出なかった案件の記録もあるか
- できあがるもの
- 記録の保存
- 改善統括管理者・目安 月1時間
10. 届出の傾向を分析し、検知の条件と研修を見直す
誤検知の多いシナリオの調整や、営業店からの報告の質の向上に取り組みます。
- 確かめること
- 見直しの結果を記録したか
- できあがるもの
- 改善の記録
締めのチェックリスト
- アラートを確認し誤検知の理由を記録したか
- 窓口の気づきを報告したか
- 顧客に疑っていることを伝えていないか
- 統括部署への報告の期限を守ったか
- 取引時確認と過去の取引を調べたか
- 参考事例と照らしたか
- 判断の根拠を記録したか
- 速やかに届け出たか
- 届出を顧客に知らせていないか
- 顧客のリスク評価を見直したか
よくあるミスと防ぎ方
営業店での抱え込み
「念のため様子を見る」と報告が遅れます。気づいたら報告する決まりにし、判断は統括部署に任せます。
判断の根拠が残らない
届け出なかった理由がないと、後の検証で説明できません。届け出なかった案件も記録します。
顧客への漏えい
取引を断るときの言い方で届出を察せられることがあります。対応の言い方を決めておきます。
測っておきたい指標
- アラートの処理日数
- 営業店からの報告件数
- 届出件数と判断までの日数
関係する法令・規格
犯罪収益移転防止法8条(疑わしい取引の届出等)
特定事業者は、取引で収受した財産が犯罪による収益である疑いなどがある場合、速やかに行政庁に届け出ます。届出をしようとしていることや届け出たことを、顧客や関係者に漏らしてはなりません。
マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(金融庁)
リスクベースでの取引モニタリング、疑わしい取引の届出の体制、継続的な顧客管理などが求められています。
疑わしい取引の参考事例(金融庁)
業態ごとに、疑わしい取引に当たる可能性のある事例が示されています。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(金融・保険・12業務)
- 「疑わしい取引の届出」を含む12業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
10手順のうち4つは、自動化の候補です
よくある質問
- どの程度の疑いで届け出ればよいですか
- 犯罪による収益である疑いがあれば届け出ます。確信までは不要で、参考事例や顧客の属性、取引の内容を総合して判断します。
- 届け出たことを顧客に伝えてもよいですか
- いいえ。犯罪収益移転防止法で、届出をしようとしていることや届け出たことを顧客や関係者に漏らすことは禁止されています。
- アラートの調査を楽にするには
- アラートの対象顧客の取引時確認や過去の取引を一つの画面にまとめる作業をジンベイ GenRPAで自動化すると、調査時間を減らせます。