仕様変更の受付と見積の業務手順書テンプレート(受託開発・情報システム)
開発中に発注者から仕様の変更や追加の依頼を受け、影響範囲を調べて見積を出し、承認を得て反映するまでの流れです。手順書にすると、口頭での変更の受け入れや、費用と納期の取り決めがないまま作業する事態を防げます。
この手順書の範囲
- 目的
- 仕様変更を必ず書面で受け、影響と費用を合意してから作業に入れるようにします。
- 範囲
- 変更の依頼を受けてから、承認・契約の変更・計画への反映までです。
- 始まるきっかけ
- 発注者から仕様の変更・追加の依頼があったとき、またはテストで要件の解釈の違いが見つかったとき
- 頻度・量の目安
- 随時・案件あたり月2〜10件
- 使う書類・システム
- 仕様変更依頼書、要件定義書・設計書(承認済みの版)、課題管理表、契約書・発注書
担当と役割
プロジェクトマネージャー(PM)
変更の受付、見積の提示、合意形成
システムエンジニア(SE)
影響範囲の調査、工数の見積
営業担当
契約の変更、追加の発注書の受領
手順(11ステップ)
1. 仕様変更依頼書を受け取る
変更の内容、理由、希望の時期、依頼者を依頼書に書いてもらいます。
- 確かめること
- 口頭や会議の発言で受けた依頼は、PM が依頼書に起こして発注者に確かめてもらう。
- できあがるもの
- 仕様変更依頼書
- 判定PM・目安 15分
2. 仕様変更か不具合かを判定する
承認済みの要件定義書・設計書に書かれているかで判断します。
- 確かめること
- 書かれている内容と違う動きなら不具合、書かれていない内容なら仕様変更。判断に迷うものは発注者と協議する。
- できあがるもの
- 判定の記録
- 調査SE・目安 2時間〜1日
3. 影響範囲を調べる
変更する画面・帳票・データ・外部連携・バッチと、テストのやり直しが必要な範囲を洗い出します。
- 確かめること
- データの項目を変える場合は、移行データへの影響も確かめる。
- できあがるもの
- 影響範囲の一覧
- 見積SE・目安 1時間
4. 工数を見積もる
設計・製造・テスト・ドキュメント更新の工数を分けて見積もります。
- 確かめること
- テストのやり直しの工数を入れる。
- できあがるもの
- 工数の見積
- 見積PM・目安 1時間
5. スケジュールへの影響を確かめる
変更を入れた場合の各工程の終わりと、リリース日への影響を出します。
- 確かめること
- 他の作業との取り合い(担当者の割り当て)を確かめる。
- できあがるもの
- スケジュール案
- 提示PM・目安 30分
6. 変更の見積と影響を発注者に示す
費用、納期への影響、品質への影響、変更しない場合の代わりの案を示します。
- 確かめること
- 複数の変更を一緒に見積もる場合、変更ごとの金額を分けて示す。
- できあがるもの
- 変更見積書
- 承認PM・目安 1〜5日
7. 発注者の承認を受け取る
変更を行うか、見送るか、次のフェーズに回すかを決めてもらい、承認の記録を受け取ります。
- 確かめること
- 承認者が発注者側の決裁権限を持つ人か確かめる。
- できあがるもの
- 承認の記録
- 契約営業担当・目安 1〜5日
8. 追加の発注書または契約の変更を受け取る
金額や納期が変わる場合は、追加の発注書・変更契約書を受け取ります。
- 確かめること
- 発注書を受け取る前に作業を始めない。やむを得ず始める場合は、着手の合意をメールで残す。
- できあがるもの
- 追加の発注書
- 反映SE・目安 1時間〜1日
9. 設計書と要件定義書を更新する
変更内容を反映し、版数と変更履歴を更新します。
- 確かめること
- 変更履歴に依頼書の番号を書く。
- できあがるもの
- 更新済みの設計書
10. 計画と課題管理表を更新する
スケジュール、テスト計画、課題管理表に変更を反映します。
- 確かめること
- テスト仕様書に追加・修正するテスト項目を入れる。
- できあがるもの
- 更新済みの計画
11. 仕様変更の一覧を更新する
依頼番号、内容、判定、金額、承認日、反映日を一覧にします。
- 確かめること
- 月次の報告で件数と金額を報告する。
- できあがるもの
- 仕様変更の一覧
締めのチェックリスト
- 依頼を書面(依頼書)で受け取った
- 仕様変更か不具合かを要件定義書で判定した
- テストのやり直しを含めて影響範囲を調べた
- 変更ごとに金額を分けて示した
- 納期と品質への影響を示した
- 決裁権限のある人の承認を受け取った
- 追加の発注書を受け取ってから作業した
- 設計書の版数と変更履歴を更新した
- テスト仕様書を更新した
- 仕様変更の一覧に記録した
よくあるミスと防ぎ方
口頭の依頼をそのまま作業する
会議で「ついでにここも」と言われた変更を作業すると、費用と納期の根拠が残りません。PM が依頼書に起こして確かめてもらいます。
テストのやり直しを見積に入れない
製造の工数だけで見積もると、後で赤字になります。影響範囲に応じた再テストの工数を必ず入れます。
発注書を受け取る前に作業を始める
追加の費用でもめる原因になります。作業の着手は発注書の受領後にするか、着手の合意をメールで残します。
測っておきたい指標
- 仕様変更の件数と金額(月次)
- 依頼から承認までの日数
- 発注書受領前に着手した件数
この業務で残す書類の保存期間
関係する法令・規格
中小受託取引適正化法(取適法)
発注者が委託事業者で自社が中小受託事業者に当たる場合、発注内容の変更や、費用を負担しないやり直しの要求が禁止行為に当たることがあります。
民法(請負・準委任)
仕様変更による報酬と完成時期の変更の合意に関わります。
無料ダウンロード
業務手順書テンプレート集(IT・受託開発・10業務)
- 「仕様変更の受付と見積」を含む10業務の手順書を、1業務1シートで書き換えられるExcel
- 手順ごとに担当・確かめること・できあがるもの・目安時間の列。自社のやり方に合わせて行を足せます
- 締めのチェックリストと改訂履歴のシートつき。A4横で印刷できます
フォームを送信すると、すぐにダウンロードできます
11手順のうち3つは、自動化の候補です
よくある質問
- 仕様変更と不具合の線引きはどうしますか。
- 承認された要件定義書・設計書を基準にします。書かれている内容と違う動きは不具合、書かれていない内容は仕様変更として扱います。
- 小さな変更でも見積は必要ですか。
- 小さな変更でも、まとめると大きな工数になります。一定の工数以下は月ごとにまとめて精算するなど、扱いを事前に決めておきます。
- 発注者から無償でやってほしいと言われたら。
- 変更の内容と工数を示し、契約の範囲かどうかを話し合います。取適法の対象となる取引では、費用を負担しないやり直しや変更の要求は禁止行為になることがあります。