取適法で、発注する側が守る4つの義務
取適法(中小受託取引適正化法)は、2026年1月1日に施行された旧下請法の改正法です。2026年1月1日以降の発注に適用されます。用語も変わり、親事業者は「委託事業者」、下請事業者は「中小受託事業者」になりました。
委託事業者に課される義務は次の4つです。どれも「いつ・何をしたか」を発注ごとに残すことで守れます。
| 義務 | 条文 | 台帳で持つもの |
|---|---|---|
| 発注内容の明示(旧3条書面) | 4条 | 明示した日、明示の方法(書面・メール等)、明示した内容 |
| 支払期日を定める(受領日から60日以内) | 3条 | 受領日、支払期日、受領日から支払期日までの日数 |
| 遅延利息の支払(年14.6%) | 6条 | 実際の支払日、遅延利息の額と支払日 |
| 取引の記録を作って2年間保存(旧5条書類) | 7条 | 受領・検査・変更・支払の記録一式 |
このほか、受領拒否・減額・買いたたき・協議に応じない一方的な代金決定など、5条で11の行為が禁止されています。手形での支払も、改正で禁止されました。
自社の発注が対象になるかの判定
対象になるかは、取引の種類と、発注する側・受ける側の資本金または従業員数で決まります。取引の種類は、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託の5つです。
| 取引の種類 | 委託事業者(発注側) | 中小受託事業者(受注側) |
|---|---|---|
| 製造委託・修理委託・特定運送委託、プログラムの作成、運送・倉庫保管・情報処理の役務 | 資本金3億円超 | 資本金3億円以下(個人を含む) |
| 資本金1千万円超3億円以下 | 資本金1千万円以下(個人を含む) | |
| 従業員300人超 | 従業員300人以下 | |
| 上記以外の情報成果物作成委託・役務提供委託 | 資本金5千万円超 | 資本金5千万円以下(個人を含む) |
| 資本金1千万円超5千万円以下 | 資本金1千万円以下(個人を含む) | |
| 従業員100人超 | 従業員100人以下 |
従業員数の基準は、今回の改正で加わりました。資本金の基準に当たる取引には、従業員数の基準は使いません。従業員数はパート・アルバイトを含み、派遣社員は含みません。判断するのは発注した時点の人数です。
受注側の従業員数を確かめることは、法律上の義務ではありません。ただ、公正取引委員会のQ&Aでは、書面やメールで確認しておくことが望ましいとされています。確認した日と回答を、協力会社の台帳に残しておくと後で示せます。
建設工事の再委託は対象外
建設業者が請け負った建設工事を、他の建設業者に再委託する取引は対象外です(2条4項)。建設業法で受注側の保護が別に図られているためです。ただし、建設資材の製造委託、設計図・工事図面の作成委託、建設工事に当たらない修理などは対象になり得ます。
外注管理台帳に持たせる列
7条の記録は、何を残すかが公正取引委員会の規則(令和7年公正取引委員会規則第10号)で決められています。4条の明示事項と合わせて、発注1件を1行とした台帳の列に落とすと次のようになります。
| 列 | 根拠 | 入れるとき |
|---|---|---|
| 受注側の名称、取適法の対象かどうか、判定に使った資本金・従業員数 | 2条 | 協力会社の登録時 |
| 委託した日、給付の内容、受領期日、受領場所 | 4条 | 発注時 |
| 代金の額(または算定方法)、支払期日 | 4条・3条 | 発注時 |
| 明示した日、明示の方法 | 4条 | 注文書やメールを出したとき |
| 未定の事項、その理由、定める予定の日、後から明示した日 | 4条・7条 | 発注時と、決まったとき |
| 受領日(役務は提供を受けた日) | 7条 | 納品・提供のとき |
| 検査完了日、検査結果、不合格品の扱い | 7条 | 検査のとき |
| 給付内容を変えた・やり直させた内容と理由 | 7条 | 変更のとき |
| 代金を増減した額と理由 | 7条 | 増減のとき |
| 支払った額、支払日、支払方法、残額 | 7条 | 支払のとき |
| 遅延利息の額と支払日 | 6条・7条 | 遅延が出たとき |
規則では、記録は事実が生じたら速やかに行うことになっています。月末にまとめて書くのではなく、受領・検査・支払のたびに担当者がその行を埋める運用にします。保存期間は、その発注の記録をすべて書き終えた日から2年間です。
60日の支払期日の数え方
支払期日は、受領日から数えて60日以内で、できる限り短く定めます。起算点は検査が終わった日ではなく、給付を受け取った日です。検査に時間がかかっても、60日の起算は変わりません。
- 支払期日を定めなかった場合は、受領日が支払期日とみなされます
- 60日を超えて定めた場合は、受領日から60日を経過した日の前日が支払期日とみなされます
- 支払が遅れた場合は、受領日から60日を経過した日から支払日まで、年14.6%の遅延利息がかかります
台帳では「受領日から支払期日までの日数」を計算列にし、60を超える行を発注の承認前に止めるのが確実です。締め日と支払サイトで支払日が決まる会社は、月末締め翌々月払いのように、受領日によって60日を超える組み合わせがないかを先に確かめておきます。
振込手数料を代金から差し引く場合も注意が必要です。公正取引委員会のQ&Aでは、受注側の合意があっても減額(5条1項3号)に当たると整理されています。
台帳を電子で持つときの要件
7条の記録は電子で作ることもできます。その場合、規則では次の3つを満たすことになっています。
- 訂正や削除をした事実と、その内容を確認できる
- 画面に表示でき、書面に出力できる
- 受注側の名称と、委託した日(範囲を指定して)で検索できる
共有フォルダのExcelは、1つ目の要件で詰まりやすくなります。誰がいつどのセルを書き換えたかが残らないためです。変更履歴が残るシステムで持つか、Excelなら版を残す運用を決めておきます。
発注内容の明示は、改正で受注側の承諾がなくてもメールなどで行えるようになりました。ただし受注側から書面を求められたときは、原則として書面を交付する必要があります。
Excel台帳で回すときにつまずくところ
列をそろえても、Excelの台帳では次の3つが起きやすくなります。
- 口頭で着手した発注が、台帳に載らないまま進む。明示した日が空欄のまま残る
- 支払期日の確認が、発注の承認と別の場所で行われる。60日を超えた発注に、支払のときに気づく
- 検査・変更・減額の記録が、メールや紙に散らばる。調査が来たときに1件ずつ探すことになる
どれも「台帳を埋める」ことが、発注・検収・支払の作業とは別の作業になっていることが原因です。承認や検収の操作そのもので台帳の行が埋まる仕組みにすると、記録漏れが起きにくくなります。
ジンベイの業務システム「外注・協力会社管理」は、この台帳を元にしています。発注ごとに明示した日と受領日から支払期日までの日数を持ち、明示していない発注と60日を超える発注を一覧で出します。承認された発注から注文書のPDFを作り、明示した日が空欄の発注には督促の通知を出します。
この記事は、2026年10月時点の法令と公正取引委員会の公開資料をもとにした一般的な解説です。個々の取引が対象になるかどうかは、公正取引委員会の資料や専門家の助言で確かめてください。