国土交通省は、管路情報を紙だけで管理している上下水道事業者等を、令和9年度末にゼロにする「紙ゼロ」を目指しています。令和7年4月時点で、全ての管路情報を電子媒体で管理している下水道事業の自治体は71%です。紙の管路図・竣工図から台帳のデータを作る入力の段階は、AIの読み取りで下書きを作り、職員が要確認の区間を直す進め方ができます。
下水道台帳の電子化とは、紙で管理してきた公共下水道の台帳(調書と図面)を、台帳システムなどで扱える電子データにすることです。管の位置・管径・管種・延長やマンホールの位置を、検索や集計、更新計画に使える形にします。
下水道台帳は、法律で調製と保管が義務づけられている
下水道法 第23条では、公共下水道管理者は公共下水道台帳を調製し、保管しなければならないとされています。台帳の記載事項など必要な事項は国土交通省令・環境省令で定め、台帳の閲覧を求められた場合は拒むことができません。
同じ下水道法に基づく都市下水路の台帳について、下水道法施行規則 第20条は、調書と図面で組成し、施設平面図には管渠の位置・形状・内のり寸法・勾配・区間距離・管渠底高・下水の流れの方向や、マンホールの位置・種類・内のり寸法などを記載すると定めています。管路図から読む情報の多さが分かります。
国の目標:令和9年度末に「紙ゼロ」
国土交通省の上下水道DXの最終とりまとめ(概要版)では、事故・災害時の調査や広域連携に役立てるため、管路情報を紙媒体のみで管理している上下水道事業者等を令和9年度末でゼロにすること(紙ゼロ)を目指し、財政支援を行うとしています。
| 指標(とりまとめのKPI) | 現状(令和7年4月) | 令和9年度 |
| 水道事業者(全国約1,400事業者)のうち、全ての管路情報を電子媒体で管理している割合(紙ゼロ) | 67% | 100% |
| 下水道事業を実施している自治体(全国約1,500自治体)のうち、全ての管路情報を電子媒体で管理している割合(紙ゼロ) | 71% | 100% |
同じ資料では、中間目標として、維持管理情報を含むことやGIS(地理情報システム)によるものが望ましいが、対応が難しい場合は、文字を判別できる汎用的なファイル形式で電子化したものも含むとしています。また、台帳システムで管理する用語の統一や、下水道の台帳に関する標準仕様書等の改訂を進めるとしています。
国土交通省の下水道データ室では、管理者ごとの「管路台帳情報等の電子化状況」も公表されています。この資料での電子化は、管渠等の施設情報と維持管理情報が、GISを基盤としたデータベースシステムで管理されていることを指しています。
紙の管路図から、台帳のデータを作る手順
- 対象をそろえる。管路図・竣工図・紙の調書を、地区と年代ごとに集め、スキャンします。小さな数字がつぶれない解像度にします。
- 地図に合わせる。道路の形や目印から、図面を地図上の位置に合わせます。座標の入っていない古い図面ほど手間がかかります。
- 施設と管を読む。マンホールや弁などの記号を拾い、そのあいだを1区間として、管径・管種・延長などの注記を結びつけます。
- 点検する。書かれた延長と縮尺から測った長さの差、区間のつながりの矛盾を確かめます。
- 台帳の項目に合わせて出す。台帳システムが取り込める形式に合わせ、要確認の区間は職員が竣工図や現地で確かめてから登録します。
AIの読み取りで変わる所、人が確かめる所
| 工程 | AIに任せられること | 人が確かめること |
| 記号・注記の読み取り | マンホール・弁などの記号と、管径・管種・延長の注記を読み、区間に結びつける | 読めなかった注記、手書きで書き足された・消された管 |
| 点検 | 記載の延長と縮尺から測った長さの差、つながりの矛盾を出す | 差がある区間を、竣工図や現地で確かめる |
| 位置合わせ | 道路の形などから地図に合わせる(画像処理) | 合わせきれなかった図面の位置 |
| 登録 | 台帳の項目に合わせた形で出す | 登録してよいかの最終判断 |
AIの読み違いはゼロにはなりません。大切なのは、AIが自信を持てなかった箇所を理由つきで出し、職員がその箇所だけを確かめられるようにすることです。まず1地区・1種類の図面で精度を測り、合う範囲から広げます。
委託・職員の入力・AIの組み合わせ
台帳の整備は、外部への委託、職員の入力、AIの読み取りのどれか1つに決める必要はありません。委託の入力作業の下書きにAIを使う、工事のたびの更新だけを職員とAIで回す、といった組み合わせができます。比べるときは、図面の枚数、更新の頻度、確認にかけられる人手をそろえて比べます。
ジンベイの図面AI
ジンベイの水道・下水道の図面AIでは、紙やスキャンの管路図から、区間ごとの管径・管種・延長と施設の位置を読み取り、台帳の項目に合わせて出す仕組みを作ります。管路図での公開事例はまだありません。近い取り組みとして、手書き図面の清書の試作では、記号の検出で9割超が清書と一致しました。広島県府中市では、AI-OCR「ジンベイ GenOCR」で、マンホールの位置が記された図面の読み取りも試していただいています(事例を読む)。庁外に図面を出せない場合は、閉域網やオンプレミスで完結させる構成も選べます。