いつから、何が変わるか
企業会計基準委員会(ASBJ)は、2024年9月13日に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」と適用指針第33号を公表しました。2027年4月1日以後に始まる事業年度の期首から適用されます(基準58項)。2025年4月1日以後に始まる事業年度から、早期適用もできます。
いちばん大きな変更は、借手の処理です。これまで賃貸借として費用処理していたオペレーティング・リースも含め、原則としてすべてのリースで「使用権資産」と「リース負債」を貸借対照表に載せます。
そのため、最初の作業は計算ではありません。社内の契約のどれにリースが含まれるかを見つける、契約の棚卸しです。ASBJの公表資料でも、これまで会計処理していなかった契約にリースが含まれると判断される場合があると書かれています。
自社が適用の対象になるか、早期適用するかは、監査人と確認してください。中小企業は「中小企業の会計に関する指針」などを使うことが多い一方で、この基準を任意で適用することもできます。
リースを含む契約の見分け方
リースかどうかは、契約の名前では決まりません(基準3項)。「業務委託契約」「利用契約」という名前でも、中身にリースが含まれることがあります。判断は契約を結んだ時点で行い、次の2つを両方満たすと、その契約はリースを含みます(基準26項、適用指針5項〜8項)。
| 要件 | 中身 | 棚卸しで確かめること |
|---|---|---|
| 特定された資産がある | 使う資産が決まっている。ただし相手が自由に別の資産に差し替えられ、差し替えで得をする場合は、特定されていない | 号機・区画・車両番号などが契約で決まっているか。相手に差し替えの権利と実益があるか |
| 使用を支配する権利がある | 使用期間を通じて、①その資産から得られる経済的利益のほとんどすべてを受け取れ、②使い方を自社が指図できる | その資産を他社と共有していないか。いつ・どう使うかを誰が決めているか |
資産の能力の一部だけを使う契約(物理的に分かれていない設備の一部など)は、原則として特定された資産に当たりません。ただし、その能力のほとんどすべてを使う場合は当たります(適用指針7項)。
注意したいのは、IFRS第16号の解説をそのまま当てはめないことです。日本の基準は、IFRSの「黙示的に特定される資産」の定めを取り入れていません。
棚卸しで漏れやすい契約
不動産の賃貸借やリース会社との契約は、見つけやすい契約です。漏れやすいのは、次のような「リースと呼ばれていない契約」です。監査法人の資料では、サービス契約・業務委託契約・電力供給契約などにもリースが含まれる可能性があるとされています。
- 運送の業務委託(専用の車両が決まっている場合)
- データセンターやサーバーの利用契約(専用の区画や機器が決まっている場合)
- 部品の製造委託(専用の設備や金型が決まっている場合)
- 電力の供給契約(特定の発電設備の出力のほとんどすべてを使う場合)
- 倉庫や店舗の一部スペースの利用契約
これらがリースに当たると決まるわけではありません。上の表の2つの要件を、契約ごとに確かめます。経理だけでは見つけられないので、総務・購買・情報システム・現場の部署から契約を集めるところから始めます。
棚卸し台帳に持たせる列
契約1件を1行にした台帳に、判定に必要な事実と、判定の結果を持たせます。判定の理由を残しておくと、監査で説明するときにそのまま使えます。
| 列 | 使いみち |
|---|---|
| 契約名、相手先、契約番号、所管部署、原本の保管場所 | 契約を集めて、重複と漏れを確かめる |
| 契約の種類(賃貸借・業務委託・利用契約など) | 名前に関係なく判定するための仕分け |
| 対象の資産と、その特定の仕方(号機・区画・車両番号など) | 特定された資産があるかの判定 |
| 相手の差し替えの権利とその実益 | 特定された資産があるかの判定 |
| 経済的利益を誰が受けるか、使い方を誰が決めるか | 使用を支配する権利があるかの判定 |
| 判定結果(リースを含む・含まない・要検討)と、その理由、判定者、判定日 | 監査での説明と、契約変更時の見直し |
| 契約開始日、解約不能期間、延長と解約のオプション | リース期間を決める |
| リース部分とサービス部分の対価、固定か変動か | リース料を決める |
| 短期リース・少額リースに当たるか | 簡便的な取扱いを使うかの判断 |
判定を見直すのは、契約の条件が変わったときだけです(基準27項)。台帳に契約変更の履歴を残し、変更があった行だけ判定し直す運用にします。
リース期間と、簡便的な取扱い
借手のリース期間は、解約できない期間に、延長オプションを行使することが合理的に確実な期間と、解約オプションを行使しないことが合理的に確実な期間を加えて決めます(基準31項)。日本の普通借家・普通借地のように、更新が前提の契約で判断が分かれやすいため、適用指針の設例に専用の例があります。
次の2つは、貸借対照表に載せずに費用処理できます。
- 短期リース:リース期間が12か月以内で、購入オプションを含まないもの(適用指針20項)
- 少額リース:減価償却資産を買ったときに費用処理する基準額以下のものや、新品のときの資産の価値が少額のものなど(適用指針22項)
少額リースの判定には、「300万円以下」「5千米ドル以下程度」という数字がよく出てきます。これは基準の結論の背景で説明されている目安で、適用指針の本文に書かれた基準額ではありません。自社の判定基準は、監査人と合わせて決めてください。
棚卸しの負担を軽くする経過措置
適用初年度は、過去にさかのぼって適用するのが原則です。累積の影響を期首の利益剰余金で調整する方法を選んだ場合は、識別についての経過措置が使えます(適用指針119項)。
- 前期末にリース取引として処理していたものは、リースを含むかどうかを判定し直さなくてよい
- それ以外の契約は、適用初年度の期首の事実と状況で判定してよい
経過措置を使っても、これまでリースとして処理していなかった契約の棚卸しは必要です。漏れやすい契約の洗い出しから先に始めると、期首に間に合わせやすくなります。
台帳を表計算からシステムに移すとき
棚卸しは一度で終わりません。適用後も、新しい契約が入るたび、条件が変わるたびに判定が要ります。表計算の台帳では、契約変更が台帳に反映されない、判定の理由が担当者の手元に残る、といったことが起きやすくなります。
ジンベイの業務システム「契約・資産台帳」は、契約と固定資産を1つの台帳で持ち、リース資産を契約とひもづけて管理します。原本の保管場所と解約通知の期限も列で持つので、棚卸しの台帳としてそのまま使えます。使用権資産やリース負債の計算は、会計システムで行う前提です。
この記事は、2026年10月時点のASBJの公表資料をもとにした一般的な解説です。個々の契約の判定や会計処理は、監査人や専門家と確認してください。