ジャパニアス株式会社では、不動産・建設領域とITの領域に特化した人材紹介・転職支援の新規事業を展開中です。今回、同事業をリードする木下尚徳氏に、AI開発会社ジンベイと取り組んだソリューションの狙いと背景、そして今後の事業ビジョンについてお話を伺いました。■展示会で生まれた、ChatGPTが導く出会い── ジンベイに開発を依頼したきっかけを教えてください。現在、私が担当しているこの事業も立ち上げから3年が経ち、お陰様で順調に成長しています。ただ、生産性のさらなる向上に向けて、「デジタルの力をどう活かせるか?」という課題意識は常に持っていました。そんな折、AI系の展示会に参加することになり、事前にChatGPTにこう尋ねてみたんです。「この展示会で、自分の事業課題を解決できそうなソリューションを提供しているのはどこか?」すると返ってきたのが「ジンベイ」という答え。興味を持ってブースを訪ね、代表の上田さんと出会いました。ChatGPTがつないでくれたご縁ですね。── 展示会前にそんな使い方をされるとは驚きです。そうかもしれませんね(笑)。後日のセッションで自分の事業、特にプロセスについて詳細をご説明し、AIをどう業務プロセスに組み込むかという構造的な視点で設計図を渡しました。それをもとに「まずはどこから始めるか?」という具体的なディスカッションが始まりました。■スカウト文生成に見る、AIと人の補完関係── 今回は「スカウト文の生成」に取り組まれたそうですね。AIでいきなり事業全体を変えるのは難しいですが、入り口部分で人間とAIがうまく噛み合えばパフォーマンスが上がると考え、この領域を選びました。転職コンサルタントがスカウト文を作成する際、見る視点は人によって異なります。同じレジュメを見ても、スキルや経験からアプローチする人もいれば、次のキャリアから切り込む人もいる。つまり、コンサルタントの視野や経験に依存している部分があるのです。コンサルタントが気づかなかった切り口やアプローチ方法をAIが提案することで、最終的により質の高いスカウト文を人が仕上げる——そんな人×AIの相乗効果が出せると考えました。── ジンベイの進行や対応はいかがでしたか?とても良かったです。特に上田代表が、私が渡した構造設計図に対して適切な「壁打ち相手」になってくれたのが印象的でした。営業担当者によっては、ビジネスリテラシーの点から事業ベースでの会話が噛み合わないこともありますが、上田さんは事業視点と開発視点の両方を理解した経営者で、すぐに本質を理解し、質の高いやりとりができました。ジンベイさんの強みはまさに、「ビジネスの本質を理解した上でAI開発ができる」ことだと感じています。■転職エージェントの未来像と、本質的な価値提供── 転職市場の変化について、どのように見ていますか?本質的には大きく変わっていません。ずっと人手不足ですし、団塊世代が引退し、ジュニア層も50代中盤に差しかかるという人口動態の構造変化により深刻化しているくらいです。── 今後、事業をどのように展開していくご予定ですか?現在の転職市場は、「とにかく数を捌くこと」に特化したエージェントが増えています。つまり、求人エントリー数を最大化して確率論をKPIにするスタイルです。しかし私は、「それはエージェントとして本質的な転職支援になるのか?」と強い疑問を抱いています。当社では、デジタルもAIも活用しますが、本質的な部分はアナログで、人の心に寄り添うことが大切だと考えています。転職とは、スキルや経歴だけでなく、価値観や特徴、その特徴が活きる環境選び、つまり自己理解にどう向き合うかが最も重要です。キャリアに対する考え方や特徴を深く掘り下げ、ご本人の「自己理解」を促し、「意思決定を支援すること」こそが、私たちの目指す転職エージェントとしてのあり方です。■編集後記「AIを使えば効率化できる」——そう語る経営者は多い中で、木下氏は「人の本質」と「AIの提言機能」を明確に線引きし、AIが意思決定を代替するのではなく、人間の視点を広げる補完役として活用する姿勢を一貫して示していました。特に今回のスカウト文生成では、AIが求職者情報や求人情報から切り口のアイデアを提案しつつ、最終的なメッセージの組み立てや送信判断はすべてコンサルタントの手に委ねられています。人が「なぜこの人に声をかけるのか」を見つめ直し、より丁寧で意図のあるスカウトを届ける——そのための協業として、AIが活かされているのです。テクノロジーが進化する今だからこそ、「人と向き合う転職支援」の価値が、より一層問われているのかもしれません。(インタビュー:2025年7月22日)[ジンベイ プロジェクト担当者から] この度は、「スカウトメール生成エージェント」の開発にご協力いただき、誠にありがとうございます。 このシステムは、皆様が「ぜひ面談したい」と思えるような、魅力的なスカウトメールを作成するコンサルタントの方の支援のために開発しました。開発にあたっては、以下の点に工夫を凝らしています。 <開発にあたっての工夫点>・多様なスカウトメールの生成ロジック件名と本文のテイストの組み合わせによって、合計9種類のスカウトメールが生成できるように設計しました。これにより、スカウト対象者の属性や状況に合わせて最適なスカウトメールを使い分けられる柔軟性を持たせています。 ・テンプレートとLLMの役割分担各スカウトメールの基本的な構成や定型文はテンプレートとして定義し、推論部分(LLM)では、スカウト対象者の情報や求人情報に基づいた個別最適化された内容(例:スカウト理由、求人マッチポイントなど)を生成するように役割を分担しました。これにより、、コンサルタントの視野や経験のみに依存せず、ベストなマッチポイントの切り口や支援に期待を寄せていただける要素出しを実現しています。そして、コンサルタントが最終的にスカウト文を仕上げる前に、AIの提言を参考にしながら、より納得感ある構成を実現できるようになっています。 <将来のアップデートについて>・自動学習と提案精度の向上生成されたスカウトメールの返信結果を、分析データとしてワークフローにフィードバックし、LLM(大規模言語モデル)のプロンプト最適化やモデル調整につなげていく構想です。これにより、より返信率の高い構成要素やアプローチ方法をAIが提言できるようになり、コンサルタントがスカウト文を仕上げる際の参考材料として、より有効なヒントを提供することが可能になります。 ・ロールプレイによるコンサルティング能力の向上トレーニング求職者とのキャリア面談において、「自己理解を深める問いかけ」や「価値観の掘り下げ」を実現できるよう、AIとコンサルタントがロールプレイできる環境の構築を目指します。 AIは求職者役となり、仮想的なレジュメや志向性を元に受け答えを行い、コンサルタントはそれに対して対話や質問を重ねていきます。終了後には、AIから「問いの深度」「論点の展開」「関係構築の印象」などの定性的なフィードバックを得られるよう設計する予定です。 これにより、若手コンサルタントの育成や、自己診断的な対話スキル向上の機会として機能することを想定しています。 [CLIENT]ジャパニアス株式会社https://jna.co.jp/ジャパニアス株式会社は、加速するテクノロジーの進化に挑戦する先端エンジニアリングカンパニーです。AI・IoT・クラウドをはじめとした先端テクノロジーで、日本のIT業界やものづくりメーカーに“新たな価値”を提供し、世の中から必要とされ続ける会社を目指します。また、人材紹介サービスでは、不動産・建設領域とIT領域を専門に事業展開。転職支援を通して『個の転機を支え、事業の好機を創り、社会をアップデートする』ことをミッションにしています。