学校法人岩崎学園は、1927年に創立、横浜を拠点に専門学校や大学院大学・幼稚園・保育園などを運営する総合教育機関です。IT・医療・デザイン・保育など、多彩な分野で時代に合わせた実践的な職業教育を展開し、企業や地域と深く連携しながら次世代を担う人材を数多く輩出しています。同じく横浜市に社を構える私たちジンベイは、同市が主催する「TECH-PoC(テック系スタートアップ実証実験等支援助成)」をきっかけに岩崎学園様と出会いました。GenOCRの活用事例を集め、サービスを成長させたいジンベイと、学園内のDX化を加速したい岩崎学園様の思惑がマッチし、トライアル導入にご協力いただきました。トライアル期間が終了した後も、GenOCRを継続して利用したいとご要望いただき、正式に導入し今に至ります。今回は、実際にGenOCRのトライアルから正式導入まで一貫して携わられた、 マーケティング・教育事業創造本部 システム・DXグループ グループ長(システム・DX統括)武藤幸一氏と、同グループ課長 皆川佳詞氏にインタビューを実施。GenOCRの正式導入に至った経緯や、岩崎学園のDXに対する考え方などをお聞きしてみました。0.プロジェクトの大まかな歩み2025年11月 横浜市主催「TECH-PoC」による実証実験開始2025年12月 社内システムとのAPI連携・トライアル運用開始2026年4月 トライアル終了に伴い正式導入インタビューにご協力いただいた皆様のご紹介(写真左から)武藤幸一 様(学校法人岩崎学園 マーケティング・教育事業創造本部 システム・DXグループ グループ長(システム・DX統括))皆川佳詞 様(同グループ 課長)1. 年間数万枚に上るアンケートの「手書き文字」との闘い- まずはこれまでのDX推進に関する取り組みの概要や、業務で感じられていた課題についてお聞かせください。皆川:私たちの所属するシステム・DXグループは、学園内のあらゆるシステム構築やDX化の推進を担っています。最近では2020年初頭のコロナ禍をきっかけに、学園内のデジタル化を一気に加速させ、大半の業務をデジタルへ移行することができました。ですが学校という特性上、どうしても「手書きの紙」を扱う業務の全てを無くすことはできず、手入力でデータ化する業務はまだ残ってしまっている状態でした。武藤:当学園は「学生に寄り添った指導を行う」という方針を大切にしていて、常に学生が何に興味を持っているのか、普段どんなことを考えているのかを深く理解したいと考えています。そのためには、彼らの声をしっかりデータ化して蓄積していくことが必要不可欠です。その手段として、例えば学校見学に訪れた高校生への「アンケート」や、在校生の「学習ポートフォリオ」など、学びの質の向上に繋げるために提出してもらう紙書類、しかも「手書きの書類」が数多くあり、これらを全てデジタル化することはなかなか難しい状況でした。特にアンケートに関しては、私たち学園側で作成したものもあれば、教材の業者が用意するものなど、十数種類のフォーマットが存在しており、回収数としては年間数万枚単位に上ります。これらを全て手作業でデータ化するには、とてつもない負担がかかっていました。そしてこのような課題に対し、私たちはシステム開発を内製で手掛けることを基本路線としているのも特徴です。これは「学園の未来をつくっていくのは自分たちであり、その自分たちが理想とする学園の姿をシステムに落とし込むべき」という考え方を大事にしているからです。絶対に外注しない、というわけではないのですが、私たちと同じ想いで伴走してくれないと外注はできない、というスタンスなんですね。例を挙げれば名刺管理システムも自分たちで開発・運用しているくらい、内製にこだわりのある組織なんです。ですので、この「手書き文字のデータ化」に関しても、当初は一般的なAIツールを駆使しながら、何とか自分たちでOCRソリューションを作れないか試行錯誤してみました。ただやはり活字は読み取れても、手書きの文字に関しては圧倒的に精度が低く、まったく歯が立ちませんでしたね。かと言って手書きの書類を全て撤廃することもできず、かなり困っていました。2. 驚きの高精度とAPI連携による使い勝手で「もう昔の運用には戻したくない」の声が- そんな中、横浜市主催の「TECH-PoC」を通じてトライアルにご協力頂けたわけですが、GenOCRの最初の印象はいかがでしたか?皆川:まず率直な感想としては「すげー!」と思いましたね(笑)ここまで精度高く手書きの文字を読んでくれるのかとびっくりしました。武藤:私も、手書き文字の読み取り精度の高さには本当に驚きましたね。私自身はこれまでにも様々なOCRツールを見たり触ったりしてきた経験があるのですが、「これまでのOCRとは全然違うな」と衝撃を受けました。例えば、私たち人間が見ても「これは何と読むんだろう?」と、判断に迷ってしまうような癖のある手書き文字ってありますよね。人間はもちろん従来のOCRだったら読めなかったであろうそんな文字でも、GenOCRは読み取ってくれるんです。さらにもう一つ私たちにとって嬉しかったのは、API連携ができる点ですね。私たちシステム・DXグループは、現場が使う業務システムの画面を一元化し、手間を徹底的に減らすことを目指しています。そのため外部ツールの選定・導入にあたっては、API連携ができ、ワンストップの業務フローを実現できるかどうかをとても重要視していました。なのでAPIが提供されているGenOCRは私たちにとってはうってつけのソリューションでしたね。- テストの段階から実際に業務で使ってみて頂くまでの手間やスピード感には、どのような感想をお持ちですか?武藤:まず時系列を整理しますと、2025年11月初旬にトライアルを始め、月内には社内システムにアンケート読み取りの仕組みを構築することができました。その後、実際の業務でのテスト運用から実運用へと進んでいき、TECH-PoCのトライアル導入期間終了後もこのまま使い続けたい!となりまして、2026年4月より正式導入いたしました。GenOCRのおかげで、これまで手作業で入力していたアンケート結果を、今ではボタン一つでデータ化できるようになっているんです。それをこのようなスピード感で社内システムと連携でき、スムーズに実戦投入できたことは非常に素晴らしい結果だと思っています。実際に業務で使った職員たちからも、TECH-PoCのトライアル導入期間終了後のタイミングで「もう昔の運用に戻すのは絶対に無理だから、なんとかこのまま契約してほしい!」と強く要望されるほどだったので、今ではすっかり日々の業務にGenOCRが溶け込んでいます。3. 後続処理まで考えた出力形式をプロンプト一つで実現できる手軽さ- 正式導入を経て、以前にも増して使い込んで頂けていると思いますが、使い勝手を良くするために工夫したポイントなどがあれば教えてください。皆川:工夫という点で言いますと、プロンプトを定義する上で「曖昧さを無くすこと」は強く意識しましたね。私たちが普段実施しているアンケートは、なるべく手軽に回収したいという考えで、A4用紙1枚に内容を収めるようなレイアウトで作られていることが多いんです。ただそのために、設問同士の間隔、例えばチェックボックス同士の間隔がとても狭かったりすることもあります。そのせいか、単に読み取らせてしまうと、チェックが付いていないのに付いていると読まれてしまったり、その逆になったりと、結果が安定しないことがありました。そこで、プロンプトで「チェックボックスにチェックがない場合は空欄で出力して」と指示したりだとか、他にも「郵便番号のハイフンは、あっても無くても全て消して出力して」とか、細かく条件を決めて設定するようにしました。一見面倒に思われるかもしれませんが、「プロンプトで出力をコントロールできる」っていうのは非常に大きいメリットなんです。こうした工夫を自分たちで試しながら業務効率を高めていける、というのはGenOCRの大きな強みだと思いますね。武藤:そうですね。私もGenOCRの良いところは「読み取り精度の高さ」はもちろん、この「読み取った後の工程まで考えて使えること」だと思っています。プロンプトの設定によって出力結果を自在にコントロールできるのは非常に便利です。例えば、実際のアンケートには自由記述欄だけではなく、皆川の話にあったようなチェックボックスだったり、あるいは選択肢を丸で囲む設問など、様々な書式が混在しているものがほとんどです。これらを読み取った後の処理の手間を減らすには、どのような形式で出力させるか?を予め指定しておく必要があります。出力結果がバラバラだと、結局手作業で直さなければいけませんからね。その点、GenOCRは複雑な設定は必要なく、プロンプトで「こういう形で出力して」と指示しておけば、その後は毎回必ず指示通りのフォーマットで出力してくれます。おかげで後工程の作業が劇的に楽になりましたね。4. 効率化を実現した「その先」まで見据えた導入を- 今後さらにGenOCRに期待したいことがあればぜひお聞かせください。武藤:今後GenOCRに期待したいこととして、強いて言えば「チェックボックスの読み取り精度のさらなる向上」ですかね。先ほど皆川がお話しした通り、私たちもプロンプトの指示を具体的に定義して工夫を重ねてはいますが、アンケートのレイアウトがかなり細かいものだったりすると、それだけでは限界を感じる部分もあるのが正直なところです。ただ実は、この点についてはトライアル時点からジンベイの担当者の方と何度もやり取りをさせていただいており、かなり改良を重ねてくださいました。そのおかげで、導入当初より劇的に改善していると実感していますし、とても感謝している点でもあります。私たちのように「チェックボックスを読み取らせる」というケースへのニーズは少ないかもしれませんが、文字以外のデザインもより高精度に識別できるよう、今後のさらなるアップデートに大いに期待したいです。- 学園全体としての今後の活用方針についても、現時点でお考えのことがあれば教えてください。武藤:DXには、業務効率化を目指す「守りのDX」と、新たな価値創造を目指す「攻めのDX」の2つがあると言われますよね。その点、今回のGenOCRを使ったアンケートのデジタル化は、守りと攻めの両方を兼ね備えたDXだと思っています。単に作業の手間を減らしただけでなく、データ化のスピードアップにより、より深いデータ分析や更なるデータ収集の機会を作ることなどにもリソースを割けるようになった。まさに当学園が大切にしている「学生に寄り添った指導を行う」を、より高いクオリティで実現していくための仕組みづくりになっていると考えています。ですのでこれからも攻めと守り、両方を重視していく考えは変わりません。ただ、現実的な見方をすれば「攻めのDX」を推進するためには、現場にある程度の時間的・心理的な余裕も必要です。余裕がなければ、新しいことを始めたくてもなかなか始められません。そこで、まずは徹底的に「守り」を固めて、業務効率化を進める、というのが当面のミッションだと考えています。例えば、交通費精算や物品購入で発生するレシートや帳票などから、自動的にデータを処理できる仕組みを作る、なども現在模索中です。それ以外にも、学校法人という組織の特性上、行政とのやり取りや提出書類も依然として紙が多いのが現状です。なのでまずは守りを固める、つまりは業務効率を着実に高めていきながら、攻めも含めた学園全体のDXをさらに加速させていきたいですね。- 最後に、今回のトライアルから正式導入までの一連の流れを踏まえて、組織のペーパーレス化やDX推進に悩まれている企業や学校法人の担当者の方に、比較検討時の注意点や導入時の心構えなどのアドバイスがあれば教えてください。皆川:私たちだけではなく、小中学校なども含め教育の現場はまだまだ紙文化が根強い。それゆえに「手書き文字を読み取る・処理する」という業務の課題はどの現場にも存在すると思います。しかしながら、日々紙を扱いながら業務が回っていると、それが「当たり前」になってしまうので、そもそも課題だということに気づけない、という方もいらっしゃるのではと思うんです。ですが今回の私たちのように、GenOCRなどの便利なツールの力を少し借りるだけで、これまで諦めていたことや手間がかかっていた業務がびっくりするほど簡単に解決できる。そのことにいち早く気づいてほしいなと思います。そのためには、「昔から紙でやってるから」「紙を無くせないからデジタル化なんて無理」と思い込まずに、まずはその「当たり前」を疑ってみる。そして「もっとこうしたい!」という思いで、新しいソリューションを積極的に試してみてほしいですね。実際に使ってみないとなかなか効果は分かりませんし、でもだからこそ、実際に使ってみれば「こんなことができるのか」「じゃあこれも!」と気付けたりもしますから。武藤:GenOCRの最大の強みは、やはり「手書き文字の圧倒的な読み込み精度」にあると感じます。便利な機能が豊富なツールだったとしても、読み取り精度が低ければ手直しの手間が増えてしまい、導入する意味がなくなってしまいますからね。まずは何より「読み取り精度の高さ」にこだわって選定するべきだと考えます。その上でぜひ考えていただきたいのが、「データ化したその先をどうするか」ということです。単にCSVで出力できればいいのか、それとも既存のシステムとシームレスに連携させたいのかなど、データ化した後の作業イメージが曖昧なまま選んでしまうと、「導入したのにあまり手間が減らない」という結果になりかねません。データ化した先の業務のことまで考えてフローを設計し、そのフローを実現できるツールかどうか?を確認することが重要です。さらにもっと言うと、「効率化できたその先まで考える」ことが大事だと思っています。というのも私たちの学園には、「単なる業務効率化のためだけのシステム投資はしない」という考えがあるんです。新しいツールを入れる際は、必ず「業務が楽になったその先に、組織がどう変わるのか?」まで考えて導入を決定します。今回のGenOCR導入も、「アンケート入力業務が楽になる」だけでなく、「効率化によって浮いた時間を、さらに学生に寄り添うために充てる」「分析できるデータの量を増やし、さらにサービスの質を高める」という、未来に向けた価値創造へと繋げられるイメージを持てたからこそ、トライアル終了後の正式導入の決断に至りました。ツール選定・導入に悩んでいる方は、ぜひ「効率化のその先で、どんな新しい価値が生まれるか」まで描いてみていただければ、自ずと使うべきツールは決まってくるんじゃないかと思います。岩崎学園の皆様、ありがとうございました。これからも皆様はもちろん、より多くの教育機関でもご活用いただけるよう、私たちも全力でサポートし続けてまいります。(インタビュー:2026年6月5日)